だんじり祭りのスポーツ化

有本氏は、決められたルールのなかで技を磨き、観客の前で迫力を競うようになった祭りの変化を「スポーツ化」と呼ぶ。

明確な勝敗はない。だが、観客と担い手が分けられた舞台の上で、ルールの範囲内で、より見応えのある技を命懸けで見せようとする点は近代スポーツと確かに重なる。

けんかを抑える規制、観客を安全に迎える設備、曳き手を集める工夫。祭りを続けるための取り組みの積み重ねの上に、やりまわしを中心とする今の祭りがあり、その舞台で技を磨く若者の真面目さが迫力を支えている。

事故後の議論を、有本氏は「大阪南部に対する偏見が、いろいろなところに挿入されて、ちょっとたちが悪い感じですね」と評する。

個々の事故の原因に、明確な答えがあるわけではない。ただ、だんじりがここまで速くなった背景にあるのは、曳く人の気性や地域の「民度」ではなく、何を競い、何が称賛されるようになったかが関係していることは否定できないだろう。観客が何に歓声を上げるかも、祭の姿をつくっているのである。

参考文献
有本尚央「岸和田だんじり祭の組織論――祭礼組織の構造と担い手のキャリアパス」『ソシオロジ』57巻1号、2012年
有本尚央「都市祭礼における『暴力』と規制――『スポーツ化』する岸和田だんじり祭」『フォーラム現代社会学』16号、2017年
「だんじり 2人死亡 泉佐野、泉大津で横転事故 16人けが」『読売新聞』(大阪本社版)2026年10月11日付朝刊、26面
中根政人「だんじり・山車巡行、祭りの死亡事故相次ぐ 過熱と安全、どう手綱引く 行政の距離感カギ」『東京新聞』2026年10月20日付朝刊、16面
『朝日新聞』1881(明治14)年9月21日付(有本2017年論文の引用による)

(構成=ライター・栗下直也)

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