裕福な家庭は高額な家庭教師を頼った
学習塾の供給は大幅に減少したが、学習需要そのものが消滅したわけではない。2025年に『International Journal of Educational Development』に掲載された研究などでは、双減政策によって表立った塾の供給が減少する一方、需要の一部が非公式な家庭教師などに移行したことが報告されている。
こうした個別指導は、従来より高額になる場合もある。裕福な家庭は家庭教師を雇える。しかし、一般家庭にはその余裕がない。
学習塾なら生徒を増やせば一人当たりの費用が下げられ、教材の標準化やオンライン化によって料金を抑えることも可能だ。こうしたサービスを規制すれば、かえって経済力のある家庭が有利になってしまう。
これは日本でも、都市部の高所得家庭の子どもが、東大や京大などの難関大学の受験で有利になっていることと似ている。
もっとも、双減政策に効果がなかったわけではない。塾への参加や支出が減少し、保護者の教育不安が一定程度軽減されたことも報告されている。中国政府は学校内の放課後学習支援も充実させた。
だが、民間の塾を減らすことと、教育費負担や進学競争を根本的に解決することは別問題だったのである。
なぜ世界トップクラスのままなのか
2021年に学習塾を厳しく規制したにもかかわらず、中国の北京、上海、江蘇、浙江の4地域は、2025年のPISAで世界最高水準の成績を収めた。OECDによれば、2018年と比べて数学は上昇し、読解力は低下し、科学はほぼ横ばいだった。塾を規制しても、学力は高い水準を維持したのである。
ただし、この結果をもって双減政策が成功したとは見るべきではない。2025年に15歳だった生徒は、政策が始まった2021年には10歳前後だった。それ以前の学校教育や塾での学習経験も成績に反映されている。
規制後も一部の学校外教育は続いており、対象4地域は中国でも教育環境に恵まれた地域である。
また、塾だけが高い学力を生み出しているわけではない。そもそもPISAは、生徒が身につけた数学、科学、読解の能力を測定するものだ。その能力を学校と塾のどちらで身につけたかを直接測定しているわけではない。
学校の授業、家庭学習、塾、通信教育、保護者の支援など、さまざまな要因が学力に関係している。

