塾規制だけでは教育格差は消えない
特に重要なのは、塾には二つの役割があるということだ。
一つは、学校の授業についていけない子どもの基礎学力を補い、より高い能力を身につけさせる役割。もう一つは、進学競争で他の子どもより有利な成績を取らせる役割である。前者は社会全体の学力向上につながるが、後者は必ずしもそうではない。
前述のとおり、すべての子どもが追加の受験対策を受けても、難関校の定員が増えるわけではない。
中国が双減政策によって抑えようとしたのは、こうした過剰な教育競争だった。しかし、塾を規制するだけでは、競争を生み出している入試制度や教育機会の格差は変わらない。
中国の経験は、教育問題を民間事業者への規制だけで解決することの難しさを示している。
日本人の好成績は塾の成果でもある
今回のPISAでは日中とも世界トップクラスの成績を収めたものの、点数だけではどれほどの時間を学習に費やし、家庭がどれほどの教育費を負担したのかはわからない。
PISAを受けるのが高校1年時点だという点にも留意が必要だ。公立中学の塾代は中学3年で最も重くなるので、日本においては家庭が最も多く塾代を投じた時期を通過した直後の学力を測っていることになるからだ。
その日本も、読解力は前回から13点下がり、3分野すべてで低得点層の割合が有意に増えた。それでも、OECD平均の落ち込みと比べれば、相対的には踏みとどまっている。
文科省が「教育改革」と称して方針をたびたび変える一方、多くの家庭は子どもを塾に通わせてきた。「文科省が迷走しつづけている学校教育だけでは心許ない」と、塾に通わせている家庭は少なくないと考えられる。
学校外教育がこれほど普及している以上、PISAの高得点を公教育だけの成果として評価することには疑問が残る。同じ高得点でも、公教育を中心に学力を身につけた場合と、家庭が多額の教育費を投入して獲得した場合では、教育制度の評価は異なる。
日本は中国より優れた教育政策を実施しているのだろうか。もちろん、そう単純には評価できない。日本では学習塾や通信教育が発達し、家庭が多様なサービスを選べるようになった。これは民間企業が教育方法を工夫し、需要に応えてきた成果である。しかし、その一方で、塾代は多くの家庭にとって重い負担となっている。
