「安くてうまい」を維持できる理由
人間業とは思えないスピードで、刻まれた野菜を片手で掴んでは、次々とビニールに詰めていく作業員や、機械のように正確な動きで白菜をカットしていく外国人女性の姿を見ながら、ここに我々が直面している「安いニッポン」という問題が集約しているような気がした。
それは一言で言ってしまうと、「AIだロボットだと言いながら結局、日本の安くてうまいを実現しているのは人間の手作業」というものだ。
わかりやすいのは今、世界中からやってくる外国人観光客に「世界一」と称賛されているコンビニスイーツやコンビニ惣菜だ。実はこの価格と品質を支えているのは、ロボットでもAIでもなく「人間の手作業」だ。
生産現場を苦しめる安売り圧力
日本惣菜協会が2023年にまとめた資料によれば、日本の製造業で最も人手がかかっているのは食品製造であり、中でも機械化が遅れているのが惣菜、すし・弁当製造だという。そして「機械化がこれまで不可能」とされてきた理由を以下のように説明している。
「高い重量精度、品位が求められ、現行技術では、採算ベースの解は無い」
これは先ほどの「カット野菜」にもまんま当てはまる。つまり、いくらAIだロボットだという時代になったとはいえ、この日本で消費者が心から満足する「安くてうまい」を実現しようと思った時、頼りになるのは結局、ハイテク工場ではなく昔ながらの「人間による手作業」というシビアな現実がある。
それを示すのが、旭物産のもやしの売上比率だ。あれほど億単位の設備投資をしているのに、実は全売上の8%ほどだという。旭物産のような設備投資をせず、「手作業」によるコスト圧縮で旭物産以上の安さを実現している競合もあるため、安売り圧力に苦しんでいるからだ。
消費者にとって「安くてうまい」がありがたいことは言うまでもない。しかし、それをあまりに過剰に求めすぎるあまり、我々は食品製造業側に無理をさせ過ぎてないか。その値下げ圧力は、まわりまわって我々の賃金を下げることにもつながっていく。
お得なカット野菜やもやしを手に取った時にちょっと冷静に考えてみていただきたい。
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