依存症の危険性がある酒量

一般に「健康なアルコール摂取量」は男性なら1日40g、女性なら20gとされる。20gは、ビールなら中ジョッキ1杯、日本酒なら1合、焼酎ならグラス半分に当たる100mLが目安であり、男性なら2ドリンクまでが安全域と覚えればいい。週に1日以上、1回に60g以上飲酒する人は、依存症につながる危険な飲み方とされているが、これはかなり厳しめのハードルでもある。

阿川さんが2日で1パック(1.8L)の焼酎を飲んでいるならば、1日のアルコール量は180gで完全に不健康領域だ。

離婚後の数年、ハイボールをあおっていた私は、平日は100g、週末は200g以上のアルコールを摂取していた。一歩間違えば、患者側に座っているのは私だった。

「お酒のせいで困っていることはありませんか?」

「別にないっすよ、前はたまたま転んだだけで。まあ肝臓の数値は心配ですけど……」

平然としているようで、救急外来で医師から通告された「肝硬変で死ぬかも」という言葉は気にしている。

「たしかにγ-GTPがこれほど高い状態が続くと、体が心配です。生活していてしんどくないですか?」

「飲みすぎた日の朝がだるいくらいっす。でもやめたくないんですよね。酒以外に楽しみもないし、別に長生きしたくもないし」

離婚して守るべき存在を失った中年男性が自暴自棄になり、自分の体を雑に扱うのはわからなくもない。というか、痛いほどわかる。かつての私も同じように厭世えんせい的になったからだ。

アルコール依存症は脳の病

「酒をやめるかどうかなんて自分の意志の問題でしょ。これでも昔より酒は減らしてますし、医者にかかる必要なんてないと思うんですよね」

「あんたはその意志が弱いからこうやって来てるんじゃない!」

「わあわあ横から口出しすんなよ!」

診察室で母と息子の言い合いが始まる。

アルコール依存症は意志が弱くてなるものではない。歴とした脳の病だ。大量飲酒を繰り返すと、脳の報酬系は変化し、アルコールによってしか快楽を感じなくなる。酒が切れれば不安やイライラが押し寄せ、飲めば一時的に落ち着くが、素面しらふに戻れば居ても立ってもいられなくなり、つねに酒を求める。酒には耐性があるので必要な量はどんどん増えていく。脳の病気なのだから、意志や根性でどうにかなるものではない。

グラスを手にしたままテーブルに伏している人
写真=iStock.com/Aramyan
※写真はイメージです