精神科医の仕事とはどのようなものなのか。精神科救急病院で働く駒木爽さんが書いた『精神科医おどおど日記』(三五館シンシャ)から一部を紹介する――。
精神科医に届く「最悪の知らせ」
「先生、××警察署から君島さくらさん(仮名)のことで問い合わせが入っています」
その日、救急外来に勤務していた私のもとに事務方から内線が入る。“警察(※1)”という言葉に無意識に首筋に力が入った。悪い予感しかしない。
「はい、回してもらっていいですよ」
院内スマホに転送された外線を取り、名前を名乗ると、電話口から感情の起伏のない事務的な声がした。
「××警察署の東野と申します。そちらに通院歴のある君島さくらさんのことでおうかがいしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
事故か何かかと考えをめぐらせながら“最悪の選択”だけをあえて頭から追い出す。
「先ほど、北区の自宅マンションから飛び降りたご本人を発見しまして、死亡が確認されました」
「……」
体の節々から力が抜けていく。
「所持品にそちらの病院の薬があったので、ご本人の病状についておうかがいできればと」
「え、あ……、はい、病名は――」
※1 警察
精神科医は何かと警察との接触が多い。たとえば、精神障害があって自傷他害の恐れのある人を警察官が保護した場合、精神保健福祉法第23条にもとづき、最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報する義務がある(これを「23条通報」と呼ぶ)。この際、救急病院の精神科医は警察署に出向いて診察を行ない、措置入院が必要か判断する。

