月給2万5000円で働く医療従事者
炭鉱労働者の暮らしを奪った石炭産業の不振は、州の財政を圧迫し、その余波は病院にまで及んでいる。
ロシア政府の機関紙のロシースカヤ・ガゼータによると、2025年、州内の石炭産業の利益は前年の約15%にまで落ち込んだ。州予算の赤字は557億ルーブル(約1060億円)に上り、ロシアの全地域で最大だ。医療費の支出は、前年の534億ルーブル(約1010億円)から460億ルーブル(約870億円)に減った。
赤字は今年に入っても続いている。ロシア経済紙のヴェドモスチが伝えたロシア会計検査院の報告書によると、2026年1〜3月の州予算の赤字は213億ルーブル(約400億円)で、額は全地域で最大だった。
税収などの自主財源に対する赤字の比率は50%で、ユダヤ自治州に次いで2番目に高い。格付け会社エクスペルトRAのタチアナ・ティルスキフ氏は、州の財政が大手輸出企業の納める法人利潤税に大きく頼っており、石炭などの価格変動が主要企業の利益を圧迫したと説明する。ロシースカヤ・ガゼータによれば、1〜6月の赤字も約243億ルーブル(約460億円)に達し、州財務省は今年度の黒字化を見込んでいない。
しわ寄せは医療の現場に及ぶ。給与を最大2割減らされたとの声が医療従事者の間で上がっていると、モスクワ・タイムズが報じている。医療従事者の中には、月給1万3000ルーブル(約2万5000円)での労働を余儀なくされている人さえいるという。一方、州は2025年6月、軍と契約を結んだ人への一時金を150万ルーブル(約290万円)に引き上げていた。月給1万3000ルーブルの10年分近い額だ。
上院議長が「悲劇」と呼んだ事件の裏側
冒頭で触れた産院での事件を、ワレンチナ・マトビエンコ上院議長は「出生率を支えようと全力を尽くす国家にとっての悲劇」と呼んだ。ところが、ロシア内政の専門家アンドラーシュ・トート=ツィフラ氏は、州内では過去5年間で病院16カ所が閉鎖されたと指摘する。
この産院で出産した別の女性は地元メディアに、施設の統廃合のあと、多い日には医師が20件もの出産を扱うと語っており、現場は疲弊している。
病院を苦しめる財政難の根本原因として、石炭産業の苦境がある。今春、知事はその深刻さを改めて強調した。
ロシア有力紙のコメルサントによると、イリヤ・セレデュク知事は4月の州議会の会合で、石炭生産量が2018年の2億5530万トンから2011年の水準にまで減ったと報告している。かつて州の歳入の40%は石炭企業が担っていたが、いまやその割合はわずか18%と、半分を切った。
モスクワ・タイムズの報道では、セレデュク氏は8月24日、州内の石炭企業の8割が赤字に陥っていると述べ、「初めは待ち、耐えてきたが、いまや耐えがたくなりつつある」と語った。
炭鉱労働者たちもまた、給料のない日々に耐えてきた。ラトビアに拠点を構えるロシア語独立紙のノーバヤ・ガゼータ・ヨーロッパによると、北クズバス社では、1700人以上の労働者が2025年10月から賃金を支払われていないと訴えている。

