防御遺伝子がオフに切り替わる
④遺伝子のスイッチが切り替わる「エピジェネティクス」
ストレスの影響は、さらに深いレベルにまで及ぶ。
私たちの遺伝子には、免疫を活性化させるもの、炎症を鎮めるものなど、身体を守るための様々なプログラムが書き込まれている。
しかし、慢性的なストレスにさらされると、コルチゾールが過剰に分泌され、これらの防御プログラムの一部が「オフ」に切り替わってしまうことがわかっている。
この現象は「エピジェネティクス(後成遺伝学)」と呼ばれる分野で研究が進んでいる。遺伝子そのものが書き換わるわけではないが、遺伝子の「読み取られ方」が変化する。
たとえるなら、楽譜(DNA)は同じでも、演奏の仕方(遺伝子の発現)が変わってしまうようなものだ。
ストレスによって防御遺伝子がオフになると、身体は病気に対する抵抗力を失っていく。
「なんとなく調子が悪い」のサイン
⑤コルチゾールの蓄積と免疫力の低下
ストレス反応が慢性化すると、コルチゾールが血中に居座り続ける。コルチゾールは本来、短期的な危機に対応するためのホルモンだ。瞬間的に心拍数を上げ、エネルギーを動員し、免疫をブーストする。ここまでは正常な反応である。
しかし、コルチゾールが長期にわたって高い状態が続くと、逆に免疫系が抑制される。白血球の働きが鈍り、炎症を鎮める機能が低下し、身体は感染症や慢性疾患に対して無防備になっていく。
風邪を引きやすくなった。傷の治りが遅くなった。原因不明の倦怠感が抜けない。――これらの「なんとなく調子が悪い」は、コルチゾールの慢性的な蓄積が免疫系を蝕んでいるサインかもしれない。
⑥不快な圧迫感
ここまで述べた細胞レベルの変化は、やがて日々の身体感覚としてはっきり現れてくる。
強いストレスが続くと、胸が締めつけられる、胃のあたりが重い、肩から首が詰まったように感じるといった身体感覚が生じる。これは交感神経の過剰な緊張により、筋肉や内臓の血管が収縮し続けていることによる。
感情的なストレスが、物理的な圧迫として身体に刻まれているのだ。

