判断力が午前中に枯渇する

前頭前野が判断に使えるエネルギーには上限がある。朝の時点ではまだ余力があっても、ストレスを受け続けた脳は、時間が経つほど判断の質が落ちていく。これが「意思決定疲労」と呼ばれる現象だ。

朝は冷静に対処できた案件が、夕方には些細なことで投げやりな決断をしてしまう。重要な判断を先送りにし続け、締め切り直前に追い込まれて質の低い選択をする。

あるいは、帰宅後にネットショッピングで不要なものを衝動買いしてしまう――これらはすべて、前頭前野の燃料切れによるものだ。

問題は、ストレス状態の脳では、この燃料の消耗スピードが通常の何倍にも跳ね上がることだ。健康な脳であれば1日を通して保つはずの判断力が、慢性ストレス下では午前中に枯渇してしまうこともある。

すると午後からの数時間は、まともな判断ができないまま仕事を続けることになる。生産性が落ちるだけではない。誤った判断が積み重なり、仕事の質、人間関係、さらには人生の方向性そのものに影響を及ぼしていく。

深夜にラップトップで作業
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細胞レベルで10歳以上老ける

③細胞の老化を加速させる「テロメアの短縮」

私たちの細胞には「テロメア」と呼ばれる構造がある。染色体の末端を保護するキャップのようなもので、靴紐の先端についているプラスチックのカバーに例えられることが多い。

カバーがすり減れば靴紐がほつれるように、テロメアが短くなれば細胞は老化し、やがて死んでいく。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校のエリッサ・エペル博士と、ノーベル生理学・医学賞受賞者のエリザベス・ブラックバーン博士らの研究は、慢性的なストレスがこのテロメアの短縮を加速させることを明らかにした。

ストレスレベルが最も高いグループの女性は、低いグループに比べて、テロメアの長さが約10年分も短かったのである。

つまり、強いストレスにさらされ続けると、細胞レベルで実年齢より10歳以上老けていくということだ。「ストレスで老ける」は比喩ではなく、観測可能な生物学的事実なのである。