「今いる患者からも、できるかぎりむしり取れ」
ほとんどの人が、勤務先から売上や収益を増やすようプレッシャーをかけられていると感じていた。特に、歯科医院経営支援組織(DSO)で働いている人はそう感じているようだ。ここ10年ほどで、こうした企業は歯科医院を次々に買収し、経営やマーケティングや業務管理を掌握する一方で、診療は歯科医に任せるといったケースがかなり増加している。
私は数カ月にわたってオンラインのデンタルフォーラムに入り浸り、この傾向がどれくらい広まっているのかたしかめようとした。ニュージャージーだけで起きているとは思えなかった。Reddit(レディット)のあるフォーラムでは、AIが導入され虫歯の可能性を検出しはじめたとたん、より多くの治療をすすめるよう圧力をかけられていると訴える歯科医たちの投稿で賑わっていた。
マイケル(これも仮名だ)に出会ったのは、そのフォーラムだった。マイケルはウィスコンシン州マディソン在住の30代の歯科医。彼は以前、大手DSOが経営する地元の歯科医院に勤務していたときのことを話してくれた。
経営会社は新規患者の獲得に苦戦しており、医師にも利益を上げろと露骨な方針を打ち出した。「今いる患者からも、できるかぎりむしり取れ」というのがその方針だった。
「あとの2箇所はどうするんだね?」
その医院では、PearlやOverjetによく似た別のAIデンタルツールのVideaAIを使用していた。「医師による診断の補助ツールとして導入されたんです」とマイケルは言う。だが、勤めはじめて1年も経たないうちに、彼は院のマネージャーからもっと詰め物を入れる件数を増やすように、とプレッシャーをかけられはじめた。
なぜなら、VideaAIが次々に虫歯を検出するからだ。「会社はこう言う。『Videaが指摘した赤い箇所は5つあるが、医師の治療計画では3箇所の詰め物しか上がっていない。あとの2箇所はどうするんだね?』」
経営会社はやがて、指摘された歯をただ「経過観察」するのはやめるように言いだした。「『AIは治療の決断を助けてくれるためのもの』というのが彼らの言い分でした」
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