本当に必要な治療なのか
私はディープクリーン先生の話を全部きっちり書き留めたが、大文字でメモを付けておくことも忘れなかった――「要セカンドオピニオン」。Pearlのプラットフォーム名が「Second Opinion」というのも皮肉な話だ。
何かがおかしい気がした。
本当はやらなくてもいい治療に、余分なお金を払うよう言いくるめられてるんじゃない? そんな治療を聞くのは初めてだった。
別に歯が痛いわけでもない。いったい何がどうしたというのか?
もっとも、こういう経験をしているのは私だけじゃないらしい。オーバージェット社(※)のCEOであり共同創設者でもあるウォーダー・イナムがAIデンタル企業を立ち上げようと思ったのも、彼女自身が同様の経験をしたからだという。
※Overjet(オーバージェット)社2018年に米で立ち上げられた、歯科特化型AIサービスを提供している企業
MITの大学院生のころ、イナムはボストンに住んでいた。その後別の街に引っ越ししたとき、歯医者も変えることになった。新しい歯科医は、6カ月前まで受けていた治療とはまったく違う治療計画を提示してきた。
どの歯科医の意見が正しいかわからない
「自分のレントゲン写真を取り寄せて基本的な歯科治療を調べはじめると、何か変だと気づきました」と彼女は私に語ってくれた。
「何人か別の歯科医師にレントゲン写真を見せてみたんだけど、みんな意見がバラバラで、どの医師の言うことが正しいのかさっぱり。科学というよりは、感覚の世界みたいに思えました」
そのとき、彼女はオーバージェットのような会社をつくろうと思いついたのだという
「このデータは構造化されてないし、今の読み方じゃ主観的すぎる。もっと客観的に判断を下せるようにできるんじゃない? とね」とイナムは言う。
「その情報を患者に提供できれば、患者自身が自分の口の中の状態を理解したうえでベストな判断を下せるようになる」
今、実際に多くの歯科医院で、その変化が起こりつつある。だが、イナムが思い描いた理想と反対の現象も起きている。
こういったツールが、それほど緊急でも必然でもない治療を正当化するために使われる場合も往々にしてあるのだ。

