ミャンマー案件と“天の声”
ただ、外部からCJ機構に持ち込まれた案件には不可思議なものも存在した。投資チームの元リーダーA氏が明かす。
「ミャンマーの地上波放送局が日本のコンテンツを発信するという案件です。18年3月に17億5000万円を支援決定したのですが、もともと政情不安定なミャンマーは投資に不向き。どう考えても収益が上がるまでに20年はかかります。どうやら『ミャンマーの案件は日本の安全保障の観点から損得抜きでやれ』という天の声があったらしく、官民ファンドの政策目的には外交も含まれるのかと妙に納得したものです。ミャンマーの日本熱は実に高く、成功の見込みがあるようにも思えましたが、21年2月の軍事クーデター以降は事実上の内戦状態で、今やクールジャパンどころではありません」
閑話休題。天の声が存在するか否かにかかわらず、すべての案件はまず、前述の分野別に分かれた投資チームに振り分けられ、各チームのFMがその投資適格性を検討。見込みありとされると、申請者とFMが数カ月にわたって事業内容を詳細まで討議し、さらにこれをパスしたものが、社長ら機構役員とFMが顔を揃えた投資戦略会議で討議された。
「戦略会議は一般企業の経営会議に相当するもので、その案件を支援するか否かはここでほぼ決まります。ただ、案件を進めたい投資チームに対して、社長が『案件自体がピンとこない』との理由で再検討を命じるなどして、会議が紛糾することも珍しくありませんでした」(前出のA氏)
喧々囂々の議論飛び交う委員会
そしてこの会議で承認された案件だけが、5~7人の有識者の委員(全員がCJ機構の社外取締役)と機構側の社長、会長で構成される最終決定機関の海外需要開拓委員会で審議される。同委員会は一般企業の取締役会に相当するものだが、戦略会議の結論を承認するだけの形式的な存在ではなく、それどころか喧々囂々の議論が飛び交っていたという。委員会に事務方として出席していた同機構元職員が語る。
「委員は誰しも一家言を持っていて自説を曲げないため、時には喧嘩腰の議論が3、4時間も続き、まとめ役の委員長は頭を抱えていました。一案件につき複数回の審議は当たり前。委員は上程された案件にまずダメを出して、細かいところにまでケチを付けるので、FMは針の筵に座らされているかのようでした」
このため、民間の何分の一という安い報酬で働いているFMたちは、委員会のたびに大量の宿題を抱えることに。土日返上の過剰労働を強いられる職場に嫌気が差して辞めていくケースも後を絶たなかった。前出のCJ機構元職員が苦笑しながら話す。

