選出難航したトップ人事

CJ機構の初代代表取締役社長CEO(最高経営責任者)にはアパレルメーカー「イッセイミヤケ」で代表取締役社長、大手百貨店「松屋」で常務執行役員を歴任した太田伸之氏が、非常勤代表取締役会長には元フジ・メディア・ホールディングス(FMH)常務取締役でサンケイビル代表取締役社長の飯島一暢氏が就任した。この人選は経産省主導で進められたが、当初想定していた候補者に相次いで断られるなど難航したという。

「アパレル業界出身の太田社長はフランクで部下には優しいけれど、スーツにネクタイ姿でいるところを見たことがありません。上場会社トップを呼び捨てにするなど不遜な態度も目立ちました。太田社長のお目付け役的存在の飯島会長は、非常勤代表取締役という微妙な立ち位置。本業のサンケイビル社長の方に力を入れていて、CJ機構会長は片手間仕事なのが見え見えでした。こうした緩いトップ2人だったため、当初は士気が旺盛だったファンドマネージャー(FM)など機構職員の間にも軋轢が生じていきました」(CJ機構元職員)

発足後のCJ機構は、14年9月の支援決定第1弾(4案件)を公表するまでに10カ月もの期間を必要とした。同機構元幹部が振り返る。

「CJ機構では『メディア・コンテンツ』『ライフスタイル』『食』『インバウンド観光』などの分野別に、FM数人からなる投資チームが編成され、案件を検討する仕組みになっています。ただ発足当初は、公募で選ぶFMの頭数さえ揃っておらず、ようやく編成が完了したのは14年3月ごろ。発足から半年経っても支援決定第1号となる案件を公表できず、申請者からは『民間ファンドや銀行より決定にずっと時間がかかる』などと酷評されました。これは経産省もかなり気にしていました」

「累損540億円」の内訳

CJ機構が26年3月までに支援決定した案件は83を数え、支援決定額は約2040億円に上る。このうち売却した34件については、599億円の支援決定額に対して544億円を回収するにとどまり、差し引き55億円の損失(実現損)となっている。

累積損失540億円の内訳は人件費などファンド運営の必要経費が262億円、投資中案件の含み損の先行計上が258億円、保有していた株式の売却などによる累積投資損失(実現損)が20億円の順。この累積投資損失額は前述の実現損55億円から、投資先のファンドから受け取った配当金など35億円を差し引いたものだ。

実現損と含み損合わせて313億円もの投資損失を計上することになったCJ機構は、一体どのようなプロセスで支援案件を決めていたのか。同機構が支援する案件には大きく分けて、①主管する経産省から持ち込まれたもの、②支援を希望する事業者自身が様々なルートから持ち込んだもの、③同機構自身がネットワークを通じて発掘したもの――という3パターンが存在した。同機構の設立当初は、設立準備室に事業者から持ち込まれた数多くの案件の中から経産省が選別したものが検討対象とされたという。