投資のプロはたった2人

「機構内で討議した案件を月1回開催の委員会に初めて上程する“頭出し”の際、投資チームから提出される資料の分量はせいぜい数十ページ。ところが審議の過程で委員があれこれと注文を付けるため、資料の分量はどんどん膨らみ、最終判断を下す際には数百ページにもなりました。支援決定に時間がかかり、FMが次々辞めるのもむべなるかなです」

前出のA氏は、こうした事態を招いた要因の一つは経産省の人選にあると憤る。

「CJ機構の経営陣や委員会のメンバーを選ぶのは経産官僚ですが、彼らには人材に関する情報がなく、民間人の能力を見極める眼力に欠けています。委員会の歴代メンバー23人のうち、投資のプロはわずかに2人。委員の中には『この人が投資判断できるの?』と疑問を感じさせる人物も存在しました」

職員が訴訟を起こす異常事態

前述した通り、アパレル業界出身でガバナンスの緩い太田氏が社長だった2010年代半ばのCJ機構では、公募で集められたFMたちの間で軋轢が生じるようになった。

「FMトップのCIO(最高投資責任者)の座を狙って敗れた某氏が不満分子化し、処遇や職場の雰囲気に不満を持つ複数の女性職員を唆して、訴訟まで引き起こしました。CJ機構内は大混乱となり、仕事どころではありませんでした」(同機構元職員)

だが太田社長はこの問題を解決できず、最後は経産省からの出向職員が解決に奔走する羽目になった。その頃CJ機構に入社した元FMのB氏は「あれほど空気の悪い職場は、それまで見たことがなかった」と打ち明ける。

その点、18年6月に第2代社長CEOに就任した北川直樹氏はソニー・ミュージックエンタテインメントという大手エンタメ企業のCEOを8年間務めた人物。経営を熟知しており、職員や癖のあるFMたちを巧みに動かしていたという。ところがそこにも思わぬ落とし穴があった。太田社長時代にCIOに就任したX氏の存在だ。

「支援先の選定をめぐってよからぬ噂が立つなど、CJ機構内でのX氏の評判は今一つ。彼の支援先選定のやり方に幻滅して辞めた優秀なFMは、『エンタメ業界に詳しい北川社長の下で働きたかったのに』と残念がっていました」(同機構元幹部)