※本稿は、坂口孝則『ブルーカラービリオネア エリートより稼ぐ「奴ら」の正体』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
会計士→配管工で月158万円の事例も
国内回帰で生じたブルーカラーの賃金水準は急激なカーブを描いている。NVIDIAのCEOは、電気技師や配管工が6桁の年収(10万ドルとしても約1580万円)になると予想した。
実際に現時点でADP(Automatic Data Processing)のデータを見てみると新規建設労働者の給与中央値が約5万ドル(≒790万円)あり、これはいわゆるホワイトカラーの新規雇用者の約4万ドル(≒630万円)をすでに超えている。
さらに高度なHVAC技術者(※)はすでに9万ドル(≒1420万円)を超えており、伸びを見るかぎりCEOの予想は当てずっぽうではない。
米国人のSNS投稿や記事を読んだり、また求人サイトなどを見たりしていると、ブルーカラーに転身してから高給になった例を目にする。会計士として働いていたキャリアを配管工に切り替え、月に1万ドル(≒158万円)以上を稼ぐ例などが転がっている。
※HVAC技術者……暖房、換気、冷房・空調のシステムを設計・設置・保守・修理する専門技術者のこと
もちろん、年収がアップしたケースしか喧伝しないだろうが、それにしても年収が3、4倍にあがった例が多数“報告”されている。会計業務はAIに代替可能だけれど、配管工はリアルな人間にしかできないのだ。
工業高校の新卒は求人倍率30倍超えに
もはや米国では現場の安価なコストを前提としたビジネスモデルは成立しない。むしろブルーカラーの教育や採用をサポートするビジネスが花盛りになっている。また米国のブルーカラー関連の技能訓練センターでは数年で4割ほど生徒が増えている例がある。これまでは「大学に行け」という高校の教育指導が、なんと「職業訓練校に行け」へと変わっている。
日本ではどうか。
全国工業高等学校長協会によると、令和6年度新卒者の求人倍率はなんと約32倍になった。私のまわりの企業も、高専卒、高卒の社員はまったく採れないと嘆く。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、現業職の賃金の伸びはすごいものがある。
自動車整備や修理従事者は27万300円から30万9100円になった。タクシー運転手は20万2900円から28万3600円だ。国からすると、製造業への投資は波及効果が高いことで知られる。製造業は自社だけで完結できない。部品や外注など、さまざまな他社と連携せねばならない。製造業に1ドルを支出すると、それが経済全体では2.69ドルほどに広がる。
だから政治家からすれば製造業を復活させれば、経済安全保障だけではなく、経済効果も出るから税収増にもなる。雇用も票にもなる。願ってもないことだ。ただし、この急激な変化に国民がついていけていない。


