仕事はあるのに職人が足りない問題

一つひとつの企業からすればブルーカラー業務は「あらかじめ儲かることは確定している」領域である。それくらい人手が足りておらず、満足な生産や建設ができない。

日本だけではなく、米国でもそうだ。実際に高度なスキルをもった労働者がもっと存在するならば、もっと米国の生産は拡大する、とかなりの米国企業が答えている。

ということは、現在の回帰も不十分で、まだ思い半ばといえる。熟練工の育成など簡単ではない。関税や為替変動も重要な問題だが、関税や為替がどうなろうが、質の高いブルーカラーを用意できない制約は、国内生産地をじゅうぶんに稼働させられない上位課題になっている。

たとえば、日本でも半導体製造の復権をこめてTSMCを国内に呼んでいる。米国では、さらに第二工場、第三工場を稼働予定というが、残念ながら一時は後ろ倒しの発表が相次いでいた。

米国でも先端半導体の製造を実現する野望の達成のためには、さらに数千人の熟練労働者が必要だ。数を集められなければ実稼働にも影響をおよぼすものの、懸念の声が聞かれる。米国には工場を物理的に「建てる」人間が、国内にはすっかりいなくなっている。

10年で120万人不足するトラック業界

複雑な配管を溶接し、膨大なケーブルを這わせる現場の作業は、画面の前に座るホワイトカラーやAIには決して代替できない。地政学の激変と国家の焦りが引き起こしたこの建設ラッシュこそが、配管工や電気技師といった現場の熟練工たちを枯渇させていった。

もちろん、半導体工場は一例であって、人手不足は風力タービン技術者、航空機技術者、エレベーター保守技術者など、さまざまな分野におよぶ。

なお、米国は労働者の定着も問題だ。溶接工のうち10年後も現職にとどまるのはわずか2.7%にすぎない。ロボット化できない特殊溶接の単価が急騰する。電気技師は組合員の30%が今後の10年間で引退すると推計される。

電気技師は育成に4、5年かかるから補充は容易でない。データセンターに加え、EV充電ステーション、再生エネルギーの施設などの建設が大幅に遅延している。また建設作業者は約40万人が不足する(「Tradespeople wanted」マッキンゼー・アンド・カンパニー)。

その他の統計でも配管工は55万人の不足(Bloomberg)、トラック業界では今後10年間で120万人の新規ドライバー、製造業では2033年までに380万人の作業者が必要だ。少し前、米国駐在者の発言を聞いた。

大型トラック
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