話す場をつくるだけでは関係は深まらない

メンバーの成長を促すために上司とメンバーがマンツーマンで定期的にミーティングをするマネジメント手法の1on1――。これを始めたとき、私は「とにかく時間を確保することが大事だ」と考えていました。

私「月1回は必ず話そう」
メンバー「わかりました」

形式としては整っていました。しかし、実際には「会話がすぐに終わる」「単なる報告で終わってしまう」「深い話にならない」など、あまりうまくいきませんでした。「せっかく1on1をやっているのに、変わらない」という感覚が続きました。

悩むビジネスマン
写真=iStock.com/paulfourk
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今ならわかります。場をつくることと、関係が深まることとは別だということが……。

ある日の1on1でも、こんなやりとりがありました。

私「最近どう?」
メンバー「特に問題ないです」

それ以上、話が続きません。そこでやり方を変えました。

私「この前の案件、どう感じた?」
メンバー「正直なところ、ちょっと迷いました」

少し具体的な話に変えたのです。すると、徐々に言葉が出てきました。私は、ここで1on1を機能させるには「メンバーが話しやすくなる関わり方」が必要だということに気づきました。少しずつでも具体的な話に変えていくことで、メンバーも答えやすくなるのです。

この一言で会話の深さがアップする

問いを具体的にすると、自然と相手から言葉が出てきます。しかし、本当に大事なのはその先です。以前の私は、答えが返ってくると、そこで満足していました。

メンバー「○○の判断で迷いました」
私「そうか、わかった」

これではせっかく開きかけた話を、入り口で閉じてしまうことになります。なぜならメンバーの最初の一言は、たいてい本音の手前にあるからです。そこで、返ってきた言葉をもう一段だけ掘るようにしました。

メンバー「○○の判断で迷いました」
私「迷ったのは、どのあたり?」
メンバー「実は、優先順位がつけられなくて……」

一度の問いでは出てこなかった本音が、二度目の問いで姿を見せます。難しいことではありません。「それで?」「もう少し聞かせて」と、相手の言葉を受けて返すだけでいいのです。

ただし、このときに大切にしたいのが、“沈黙への向き合い方”です。相手が黙ると、つい間を埋めたくなります。以前の私は、すぐ次の質問を重ねていました。しかし、その沈黙は相手が考えている時間であることが多いもの。したがって、現在では相手が黙っていても、少し待つようにしています。

たしかに相手の言葉を待つのは、最初はなかなか落ち着かないものです。それでも数秒待つと、相手は自分の言葉で続きを話し始めます。

問いを変えるだけでなく、返ってきた答えを受け止め、相手の沈黙にもきちんと向き合う――。うまく聞き出すことより、相手が安心して考えられるようにすることが大切なのです。

【Point】メンバーの本音は“最初の一言”の先にある