日本はインドに10兆円投資を約束した
日本との間では、今後10年で10兆円規模の投資を動員する目標が掲げられた。半導体、電池、クリーンエネルギー、重要鉱物など、どれもインドが中国依存から脱したい分野ばかりである。
※PMINDIA「PM’s press statement during the joint press statement with the Prime Minister of Japan」(2026年7月2日)
とくに日本の強みである車載半導体やハイブリッド技術を含む環境インフラ分野は、インドの莫大な内需を支える次世代産業の要となる。中国の安価な製品に頼らずとも、日本の質の高い技術移転によって自国の製造業を底上げできるという見通しが、インドの対中外交の自由度を高めている。
日米ともに、中国との戦略的競争におけるインドの重要性は痛感している。それは安倍晋三首相(当時)が、モディ首相との対話の機会をできるだけもったことからもわかる。安倍首相による安全保障構想である「自由で開かれたインド太平洋」にとって、日印関係は重要な土台であり出発点だった。
インドが「中国離れ」を実現する大きな鍵は、技術や部品・素材などの供給国を中国以外に確保することにある。だからこそ、日本がその役目を担うことが重要なのである。
プーチンが陥った「人民元の罠」
もう1つの大国、ロシアはどうか。
ロシア側に中国への不満が存在することは、様々な形で見て取れる。上述したように、国営のRTでさえ「中国は戦略的パートナーシップの恩恵を享受しながら、それに伴う負担を十分に担おうとしていない」と批判したこともその一つだ。
ロシア側の不満として象徴的なのが、「パワー・オブ・シベリア2」パイプライン交渉の行き詰まりだ。ロシアが悲願とするこの大型ガスパイプラインの建設について、中国との価格交渉は難航している。中国側はロシアにとって厳しい価格条件を求めているとされる。
プーチン大統領は5月の訪中でも価格を含む最終合意を取りつけることができなかった。
金融面でも、ロシアは「人民元の罠」に陥っている。西側制裁によってドル圏から締め出されたロシアは、貿易決済を人民元に切り替えた。だが、2026年3月、ロシアの銀行システムで深刻な人民元流動性危機が発生し、翌日物金利が年率44%まで急騰した。原油輸出収入の減少や、ロシア政府による人民元売却停止など複数の要因が重なったためだ。
※The Moscow Times「Russia Faces Acute Yuan Shortage as Trade Lifeline Tightens」(2026年3月19日)
ロシアがドルより使い勝手の悪い人民元への依存を強めたことで、中国側の政策や金融機関の姿勢が、ロシア経済に大きな影響を与えるようになったのである。

