データをつくる経験から鵜呑みしない目を鍛えた

数字のデータと人間の心理。それが鈴木敏文流経営学の二本柱だった。そのため「データ主義」「心理学経営」とも呼ばれた。

原点は、イトーヨーカ堂に転じる前の出版取次のトーハン時代だ。当時23歳。昭和30年代初めで出版業界はまだ近代化されておらず、統計らしきものがなかった。出版関連のデータを収集分析するため、大学の先生を招いて統計学と心理学の講義を受けた。

データの納得性を高めるには学術的に調査する必要があり、統計学を懸命に修得した。読者インタビューを行う際、誘導により回答者が心理的な影響を受けないよう質問の仕方が重要で、心理学の知識も不可欠だった。「本当に猛勉強した」と鈴木氏は振り返る。この間データをつくる側を経験したことで、世間に出回るデータを見ても必ずしも鵜呑みにしない目が鍛えられ、ちょっとした数字の変化にも突っ込んで考える習性を身につけた。

(撮影=市来朋久)