柴犬など古代犬種や愛玩犬種は抑制力が低め

アメリカの研究チームは、イヌの認知能力を調べるための市民科学プロジェクト「ドグニション(Dognition)」を立ち上げました。そこで収集された11の認知テストのデータを解析すると、イヌの認知能力がコミュニケーション力、抑制力、記憶力、推論力という4つの要素に構造化できることが示されました。さまざまな犬種のデータを集めて犬種間の遺伝率を推定したところ、抑制力(70%)がもっとも高く、コミュニケーション力(39%)が中程度で、記憶力(17%)と推論力(21%)は低めであることを報告しています。

このように、自分の感情を抑えたりヒトとの意思疎通がうまかったりする能力がより強い遺伝的基盤に支えられているというこの結果は、オオカミからイヌへの性格の変化の方向性ともよくマッチします。

実際の認知テストの成績を犬種グループ間で比較してみると、図表3のようになります。抑制力とコミュニケーション力がどちらも高めなのが、作業犬グループとスポーティング・グループです。一方、古代犬種、嗅覚ハウンド、テリア犬種、愛玩犬種の4つのグループは抑制力もコミュニケーション力もどちらも低めでした。

 

血統管理団体による犬種グループと遺伝解析による犬種グループの対応
出典=『犬の性格を科学する』(集英社新書)
豆柴
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どのテストでもボーダー・コリーが上位

この結果も、性格の犬種差の結果と似ています。牧畜犬種グループは遊び好きでヒトの指示への服従性が高い性格をもち、認知テストの結果をみると、抑制力もコミュニケーション力も平均的なスコアでした。ただし、牧畜犬種の成績は犬種によるバラつきが大きいようです。

牧畜犬種については、フィンランドの研究チームが行った認知テストの結果が有益な情報を与えてくれます。この研究では牧畜犬種とリトリーバー犬種を中心とした13犬種を対象として7種類の認知テストを実施しました。その結果、やはり抑制力とコミュニケーション力に関連する4つの認知テストの成績に犬種差がみられました。犬種別の成績をみると、犬種差がみられたすべての認知テストの成績でボーダー・コリーが上位の成績を収めました。この結果も、ボーダー・コリーがトレーニングに従いやすい遺伝的素質をもつという考えを補強するものです。

障害物をジャンプするボーダーコリー
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