亡くなる直前に託した手紙
一休さんには、こんな話もあります。亡くなる直前、一休さんはお寺の弟子たちに手紙を託しました。
「本当に困り果てて、どうしようもなくなったときに開けなさい」
一休さんが旅立って数年後、お寺に存亡の危機が訪れました。青い顔をして集まった弟子たちは、手紙を開くことにしました。いったいどんな高遠な教えが記されていたのでしょう。
そこにはたった一言、「心配するな、なんとかなる」。これには皆、腹を抱えて笑ったそうです。「なんだ、人の気も知らないで」と怒り出してもよさそうなものですが、そこは一休さんの弟子たちです。眉間に皺を寄せて悩んでいた自分たちが、急に可笑しくなってしまったに違いありません。
そうして一笑いすれば、心も軽くなります。頭もすっきりとして、「ああしよう、こうしよう」と、冴えたアイデアが浮かんでくるものです。きっと一休さんは、そこまで見越していたのでしょう。
立派に死のうとしすぎている
「死にとうない」という言葉も、「なんとかなる」という手紙も、死を特別なもの、恐ろしいものとはせず、生の一部として包み込んでしまうようなおおらかさを持っています。
私たちは、立派に死のうとしすぎているのかもしれません。死を前にして、何か特別な心境にならなければいけないと思い込み、かえって自分を追い詰めている。そんな気がします。
そんなに構えなくていい。死にたくないなら、死にたくないと言えばいい。なんとかなる、と笑えるなら、笑えばいい。一休さんは、そう言っているかもしれません。
そして、一休さんにはもう1つ、忘れられない言葉があります。死の床についた人に向けて、こう言ったというのです。
「あちらで待っていろ。わしもすぐに逝くからな」
周囲はびっくりしたそうですが、これほど温かい言葉がほかにあるでしょうか。一人で逝かせない、すぐに追いかける。その一言が、どれほど旅立つ人の支えになったことでしょう。
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