真の目的は「身辺調査」か
そのときは「どうしてだろう……」「何か悪いことをしたのかな?」という会話だけで終わり、気にも留めなかったが、有効なパスポートとビザを有しているのにもかかわらず、明確な理由を告げないまま出国させないという例は、中国各地で静かに起きていたようだ。
それが表沙汰になることはほとんどなく、当事者は泣き寝入りするだけだったかもしれないが、今回の規定により、中国のSNS上では「出国できない理由を知りたい」「もし出国できても、帰国できない可能性はあるのか」などさまざまな噂が飛び交っており、弁護士などの専門家が動画で規定の内容を解説している。
それを見てみると、「虚偽の出入国、滞在申請は許可されない」といった当たり前のことが語られており、とくに目新しい情報は見つからなかった。だが、中国の知人によると、パスポートを取り上げるのは、その人の身辺調査をするという名目があるようだ。
たとえ本人の思想、行動、社会生活に問題がなくても、家族や交友関係を調べ上げるという情報もある。中国ではパスポートがなくても身分証だけで調査は十分可能だが、パスポートを取り上げるという行為自体に出国意欲を抑止する効果が見込めるだろうという。
訪日観光客が激増している一方で
規定を見ると、「戦争、武力衝突、治安悪化、自然災害、感染症などのリスクが高い国・地域への渡航は慎重に検討するよう注意喚起し、渡航を思いとどまらせる」という項目がある。具体的な国・地域名は明記されていないが、昨年、高市首相の「台湾有事」発言により関係が悪化した日本はそれに該当すると考えられる。逆にいうと、もし今、海外旅行に行くなら、中国との関係が良好な国・地域に限られると言える。
日本政府観光局(JNTO)の発表によると、今年8月の訪日観光客数は309万8900人だった。前年同期比9.6%減となったものの、韓国、マレーシアなど14カ国・地域で8月として過去最高を記録した。
一方、中国の今年1月~8月の総数は290万4600人で前年同期比56.7%減だった。JNTOが発表した概況には、中国政府による注意喚起のほか、スクールホリデーの影響、航空便の減便の影響もあると書かれているが、国内景気の悪化や、同規定が施行される予定であることも影響した可能性がある。

