資金を提供してくれない「鉄壁の友」
では、中国はML-1を諦めたのだろうか。少なくとも両国とも、「降りる」とは表明していない。それでも、現実的には協業の道はほぼ閉ざされた。
ロイターによれば、資金源を中国からADBへ移す計画は外交的にデリケートではあるものの、中国とはすでに事前調整が済んでいるという。パキスタン政府の高官は、「我々は決してその関係を損なうことはない」と語り、一方的に中国を見限ったとの印象を与えることを避けている。
中国側も、このプロジェクトから距離を置くとは明確に述べていない。ロイターの取材に対し、中国外務省は、「中国とパキスタンは鉄壁の友であり、あらゆる状況下において戦略的パートナーである」と回答した。ただし、同省が今後の協力分野として挙げたのは農業、工業、鉱業であり、ここでも鉄道への言及はない。
つまり、どちらも体面を重んじ、正式には交渉決裂を認めないまま、実態として関与を薄くしている。ML-1改修計画は待望の中国資金を一切受け取ることができないまま、中国主導の枠組みから外された。
今後についてロイターは、ADBが事業に資金を出す金融機関のコンソーシアム(連合)を主導し、実際に工事を担う海外のエンジニアリング業者を競争入札で選定する見通しだと述べている。中国が単独で資金を賄うという当初の前提は、根本から覆った。
起工式すらまだ行われていない
本来であれば、今年7月には第1段階のカラチ―ロヒ区間で、起工式が行われているはずだった。しかし、進捗は芳しくない。
2026年8月15日、ラホールのパキスタン鉄道本部。鉄道省次官で鉄道委員会会長を兼ねるマザール・アリ・シャー氏は、国際的な設計・審査のコンサルタントと鉄道幹部を呼び集め、カラチ―ロヒ区間の準備状況の一斉点検を行った。エクスプレス・トリビューンによれば、シャー氏は審査フェーズを10月30日までに終えるよう指示したという。
パキスタン英語経済日刊紙のビジネス・レコーダーによれば、パキスタン鉄道が専門家や関係企業と協議する第2回市場調査が9月8日に完了した。エクスプレス・トリビューンによれば、国民議会に提出された資料では、480キロの同区間の事業費は20億4000万ドル(約3160億円)、工期は3年とされる。政府はこの区間の資金調達についてADBと協議し、1000万ドル(約15億5000万円)のプロジェクト準備融資をすでに確保している。
アラブ・ニュースによれば、ハニフ・アッバシ鉄道相は「これまでの進捗を踏まえれば、旗艦事業ML-1が年内に着工する見通しは明るい」と公式声明で述べた。
2017年、パキスタンはADBからの35億ドルの支援を断った。それから9年後、第1段階の約20億ドルの資金調達で、再びADBを頼ることになるとは、当時の政府は想像していなかっただろう。
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