中国が融資をためらうパキスタンの借金苦
一方で、同じブルームバーグ記事は、整備が行き届かない列車の様子も伝えている。ペシャワール発カラチ行きの「アワム・エクスプレス」では、ある車両のエアコンが動かず、車内は蒸し暑い。だからこそ乗客の期待は、中国による資金援助に向かう。
ペシャワールへ向かう主婦のアスマ・ラフィクさんはブルームバーグに、「これまで3、4回乗りましたが、良くなっています」としたうえで、「中国の投資があれば、パキスタンの鉄道は最高のものになれるでしょう」と話す。
しかし、パキスタン国民が待ち望んだML-1への中国の投資は、結局のところ実現しなかった。
パキスタンと中国は10年にわたって交渉を重ねたが、資金調達の合意には至っていない。ロイター通信は、CPECの大型事業が、2022年に開通したグワダル東湾高速道路を最後に途絶えたと指摘する。
中国が融資に二の足を踏む最大の理由が、すでにパキスタンが抱えている莫大な対中債務だ。代表例として、エクスプレス・トリビューンによると、CPECのもとで中国企業が建てた発電所への未払い金は、2026年6月末の時点で4230億ルピー(約2370億円)に上る。
パキスタン側は延滞金約1700億ルピー(約952億円)の免除を求めるが、中国の金融機関と発電事業者は応じず、2600億ルピー(約1450億円)を超える元本の支払いも進んでいない。
こうして融資の交渉が難航するうちにも、車両の劣化は進む。ドーンによると、2026年1月の国民議会鉄道常任委員会で鉄道省の担当官は、保有機関車の63%以上が20年以上を経過し、故障も増えていると説明した。
テロリストの標的になるパキスタン鉄道
ドーンが引用したパキスタン会計検査院の報告書によれば、2024~25会計年度の鉄道の純損失は611億9000万ルピー(約342億円)で、収益の3分の2近くに相当する。
もはや鉄道を選ぶ利用者は少数派だ。国内では、旅客の約93%、貨物の最大96%を道路輸送が担う。
老朽化したインフラに加え、パキスタンの鉄道は武装勢力による襲撃という難題も背負っている。
2025年3月11日午前9時、約400人を乗せた「ジャアファール・エクスプレス」がバロチスタン州の州都クエッタを発ち、北西部の都市ペシャワールへ向かった。
午後1時ごろ、列車はクエッタから約160キロのシビ近郊に差しかかる。植民地時代のトンネルが連なるボラン峠で、分離主義武装組織「バロチスタン解放軍(BLA)」のロケット弾と銃弾が降り注いだ。応戦した鉄道警察官と武装警備員が弾薬を撃ち尽くすと、襲撃者たちは乗客を列車から引き下ろし始めた。
乗客は身分証明書で民族ごとに選別され、パンジャブ人や軍とのつながりを疑われた者が次々と線路脇に連れ出されて射殺された。BLAは乗客を人質に取り、「バロチ人の政治犯、強制失踪者、民族抵抗運動の活動家の無条件釈放」を求めて、パキスタン政府に48時間の期限を突きつけた。
「次は自分の番だと分かっていた」と、列車に乗り合わせていた鉄道警察官のグラム・サルワール氏(48)はカタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラに、恐怖の体験を振り返っている。

