負債6億円を背負った41歳

創業者から「スワロー食品を買ってほしい」と突拍子もない申し出を受けたとき、ふと頭をよぎったのは「メーカーを買えば、今からでも『ものづくり』ができるんじゃないか」という小さな期待だ。自分で一から作ろうと思うと、莫大な設備投資が必要で、現実的ではない。だが、目の前には設備も、技術も、人材も揃っている。

業績は悪かったが、大手コンビニ3社やオーケー・サミットなど、主要スーパーを顧客としていた。なのに、なぜか不釣り合いな数字しか出ていない――。違和感を覚えた。

「これは商品が悪いんじゃなくて、経営に問題があるんじゃないか……?」

仮説を立てると、「検証したい」という衝動が湧いてきた。エリアトップに育て上げた税理士法人をあっさり同僚に譲り、6億円の負債を抱える企業の社長になることを決意した。

「専業化しかない」という確信

2014年12月、周囲の反対を押し切って買収を進めた篠崎さんは、41歳で2代目社長に就任。以降は一つの方針を軸に経営を進めてきた。それが「既存事業への一点集中」だ。

「資本力のない中小零細メーカーが生き残るには、専業化しかありません。少ない資源を分散したところで大手には敵わないけど、一点突破なら勝機はある。

総合食品メーカーは資金を全体に割り振る必要があるし、人材もマルチタスクができるように育てなきゃいけない。でも、うちは全部『春巻きを作る』ことだけに最適化できる。すると、当然技能が高まるので、他メーカーがハンドリングできないこともできるようになるんですよ」

そもそも薄い皮で具材を巻く春巻きは、不良品(ロス)が出やすい製品だ。そのため、1990年代後半以降、大手メーカーは赤字続きだった春巻き事業から次々に撤退。最盛期は30〜40社が競合していたが、現在は5〜6社へと数が絞られた経緯がある。しかし、スワロー食品は地道に改善を重ねたことで、歩留まり(投入した原料に対する完成品の割合)が向上。二桁台の利益率を維持できるようになった。

大手が捨てた「非効率」に商機

また、専業だからこそ大手メーカーが「非効率的」と判断する作業に、手間暇をかけられた。例えば、一般的に春巻きの具は90分間加熱されるため、結果的に「煮て」いるメーカーが多い。さらに、出来上がった具材にとろみをつけることで、パイプを使って圧送できるようにしているのだ。対して、同社は中華料理店と同様の手順を踏み、高火力の直火釜を使って20分間「炒めて」いる。完成したら手作業でバットに移し、味を染み込ませるために冷蔵庫で一晩寝かせる、という手のかけようだ。

700Lの直火釜を使い、20分で高温調理されている
写真提供=スワロー食品
700Lの直火釜を使い、20分で高温調理されている

「大手メーカーはこんなことやってられないと思います。でも、うちは春巻きしか飯の種がないので、ここで負けるわけにいかないんです」