移籍は“裏切り行為”
NPBでは長らく、入団した球団に骨をうずめることが尊いとされてきた。他球団に移籍するのは、球団や監督、選手と不和になった選手が多く、ファンも移籍選手を裏切り者であるかのようにみなしてきた。
これに対し、MLBでは移籍するのは他球団に実力を認められているからであり、名誉と受け止める意識が強い。中には、27年のキャリアで歴代1位の通算5714奪三振、史上最多7度のノーヒットノーランを達成しているノーラン・ライアンのように、ロサンゼルス・エンゼルスで「30」、ヒューストン・アストロズ、テキサス・レンジャーズで「34」と、3球団で永久欠番になっている選手もいる。複数の球団で永久欠番になっている選手は15人にも及ぶ。MLBには移籍した選手でも在籍時代の功績をたたえる文化があるのだ。
そして日本プロ野球で永久欠番があまり普及していないのは「ファンの反応が鈍いから」でもある。今、NPB各球団の本拠地スタンドは連日満員の盛況だが、この状況になったのは2005年の「球界再編」からだ。それ以前のプロ野球は放映権と親会社の支援に頼り、観客動員は低迷したままだった。
過去の名選手を知らないファン
しかし球界再編以降、ソフトバンク、日本ハム、新球団の楽天などが「地域密着のマーケティング」によって独自の顧客を開拓、その動きが他球団に波及した。
2005年の球界再編初年、12球団の観客動員は1992万4613人、1試合平均2万3552人だったが、20年後の2025年は2704万286人、1試合平均3万1515人、1試合平均では33.8%も増加した。
今、球場を埋め尽くす観客の大半は、球界再編以降の球団の地域密着マーケティングによって足を運ぶようになったと言っても過言ではない。
日本プロ野球の歴史は今年で90年になるが、たかだか20年くらい前の記憶しかない観客が大半であり、稲尾和久(1956年~69年)、米田哲也(1956年~77年)、若松勉(1971年~89年)、遠藤一彦(1978年~92年)ら、昭和、平成初期のスタジアムを沸かせた名選手は、今の多くのファンの記憶にはない。巨人の長嶋茂雄、王貞治、江川卓らは、メディアでの露出が多いので今も知る人が多いが、他球団はそうではない。

