新工場を待たず「空きスペース」で増産
ただし、新工場の発表がそのまま増産を意味するわけではない。キオクシアは、Fab3の詳しい建設日程と製造装置への投資額を、今後の市場動向を見ながら決めるとしている。
一方、キオクシアは6月の投資家向け説明会で、四日市工場第7製造棟と北上工場第2製造棟の空きスペースに製造装置を追加し、増産する考えを示した。2029年までは既存の建屋で、市場が求める記憶容量の伸びに対応できるという。
供給能力の拡大は、すでに始まっている。キオクシアとサンディスクは7月3日、北上工場第2製造棟で第10世代3次元フラッシュメモリーの生産を開始した。同棟は2025年9月から第8世代を生産しており、空きスペースへ新世代の設備を加えている。
一方、競合も増産の準備を進めている。韓国のSKハイニックスは、清州の新工場M17で最初のクリーンルームを2028年12月に開設し、製造装置の導入を需要に合わせて進める計画だ。
4月14日に公開されたロイターの記事によると、中国の長江存儲科技(YMTC)の武漢第3工場は2026年後半に稼働を始める見通しで、現在は製造装置の導入が進んでいる。供給を増やそうとしているのは、キオクシアだけではない。
分かれ目は「2027年後半」に来る
今後、キオクシアが成長を続けられるかどうかの決め手は、供給の伸びを上回る勢いで、AI向けの需要が伸び続けるかどうかである。その分かれ目がいつ来るのか、キオクシアと外部の見方は食い違っている。
キオクシアは6月のインベスター・デーで、2027年後半以降も需給の逼迫は続き、価格の急落は見込んでいないと説明した。2025〜2028年のNAND需要は記憶容量ベースで年平均22%伸び、牽引役はAI推論向けだという。7月31日の決算説明会でも、2027年は需要が供給を上回るとの見方を繰り返している。
一方、台湾の調査会社トレンドフォースが2026年7月21日に公表した資料によると、2026年のNAND市場は4〜5%の供給不足となる見通しだ。
また、トレンドフォースが同年7月30日に公表した資料によると、層数の多いNANDへの生産切り替えや新工場の立ち上がりによって、2027年の供給量は増える見通しだ。スマートフォンやノートPC向け需要の弱さも重なり、2027年後半には需給が緩み、価格が下がりやすくなるとみている。

