怒りではなく慈悲の心で導く

粗暴なことばを言うな。言われた者は、君に言い返すだろう。怒りを含んだことばは苦痛である。仕返しが君に返ってくるだろう。(法句経133)

荒々しいことばを使うな、怒りにまかせた悪口を言うな、振り下ろした鞭むちが自分に跳ね返るように、きっと自分に返ってくるから――。すなわち「相手に苦痛を与えることばは、いずれ自分に苦をもたらす」という戒めです。

ブッダは心の平安を得るには、身心を調ととのええるだけでなく「ことばを調える」ことも重視しました。「身しん・口くち・意い」の三業さんごう(身体からだ・ことば・心)を調えよということです。肉体の暴力で相手を傷つけるように、ことばによっても相手を傷つけたり自ら傷つくことがある、という明快な教えがここにあります。

道元禅師どうげんぜんじは、これに呼応するように「汚いことばで僧を叱ったり、過失を言い立ててなじってはいけない。たとえ相手が道理に反した悪人でも、憎み誹そしってはいけない」と言っています。ではどうするのかというと、「慈悲心をもって善道へ導け、相手が腹を立てないような方法で教え導け(※)」と言っています。