おだやかな顔と愛のことばで

ことばが怒りを放つのを抑え守れ。ことばをよく制御せよ。ことばによる悪い行いを捨て、ことばによって善行を修めよ。(法句経232)

ことばがむらむらと怒りを持たないようにするには、「和顔愛語わげんあいご」という仏教の特効薬があります。これは「おだやかな笑顔(和顔)とやさしいことば(愛語)」で常に人と接するということ。

もとはお経にあることばですが、道元禅師どうげんぜんじはとくに「愛語」を重んじ、「愛語は愛心より起こり、愛心は慈心を種子とせり。愛語よく廻天かいてんの力あることを学すべきなり」(愛語とは慈悲を種子とする愛の心から起こるもの。愛語にはあらゆる困難を一変させる力のあることを学ぶべきだ)と言っています。

愛語の「廻天の力」とは、たとえば怨敵おんてきの憎悪さえ打ち砕き、君子をして善の心に目覚めさせる力があるというのです。そしてこんなことばも。

むかひて愛語をきくは、おもてを喜ばしめ、こころを楽しくす。むかはずして愛語をきくは、肝に銘じ、魂に銘ず。(『正法眼蔵しょうぼうげんぞう菩提薩埵四摂法ぼだいさったししょうぼう』)

面と向かってやさしいことばをかけられたら思わず顔に喜びがあふれ、心は楽しく嬉しくなる。人づてにやさしいことばを聞いたなら、嬉しさもありがたさも心に刻まれ、一生忘れることはない――。

愛語はまさに愛のことばなのです。

老人に安心され若者に慕われる人

粗野でなく、わかりやすく、真実のことばを語り、だれも不機嫌にしない人、彼をわれはバラモンとよぶ。(法句経408)

先にも紹介した「和顔愛語わげんあいご」(常におだやかな表情でやさしいことばを話す)の心がけをしていると、こんな人物になれるかもしれません。周囲のだれも不機嫌にしないというだけで、十分人に慕われる人物像ではないでしょうか。

宮下 真著、永井政之監修『一日一語、読むだけで心がととのう ブッダのことば』(永岡書店)
宮下 真著、永井政之監修『一日一語、読むだけで心がととのう ブッダのことば』(永岡書店)

ここでいうバラモンとは理想の修行者、最高の弟子といった意味で、『論語』でいうなら「君子」にあたることばと考えればいいでしょう。その『論語』には、弟子に「先生の望む人物像を聞かせてください」と問われ、孔子がこのように答える話があります。

子曰しいわく、老者はこれを安んじ、朋友はこれを信じ、少者はこれを懐けん」(公冶長こうやちょう篇五)。

老人には安心され、友人には信頼され、若者には慕われる――そんな人物になりたいものだな、と孔子は言うのです。

人間として、まさにそれで十分ではないでしょうか。こういう人物に不機嫌になる人はいないでしょう。私たちも自分の資質に応じて「こうなりたい人物像」のイメージを持つことは、人生の指針として思いのほか有効かもしれません。

検索時にプレジデントオンラインに関連する記事が表示されます

【関連記事】
黙っていても発言しても人は必ず悪口を言われる…2500年前にブッダが説いた「聞き流していい"非難の種類"」
台所を見れば認知症の予兆がわかる…介護のプロが断言「物忘れ」よりも早く気づける"食卓の異変"
日本人に突出して多いのはA型だが韓国は全く異なるのはなぜか…"血液型に刻まれた人類の進化と適応の歴史"
ケネディ大統領と破局したら次は弟へ…「恋多き女」マリリン・モンローを"メンヘラ化"させた2つの大事件
なぜ日本人夫婦の3組に1組が離婚するのか…「価値観の違い」でも「セックスレス」でもない本当の原因