世界ロボット大会で見えた習政権の思惑
中国がヒト型ロボットを重視する要因の一つは、人口や労働力の減少に対応することだろう。生産年齢人口の減少により、中国で事業を行う企業の労働コストは増える。安価で豊富な労働力を求め、海外直接投資を積み増す中国企業も増えた。
そうした動きを食い止めるため、ヒト型ロボットを産業分野で利用する必要性は高い。民生向けにも、ヒト型ロボットの需要は増えるだろう。代表的なのは介護や医療の分野だ。
今年8月19日、北京で始まった第11回「世界ロボット大会」では、医療・ヘルスケア分野などで利用を想定したヒト型ロボット、エンボディドAI(物理的な体を持つAI)が多数展示された。ヒューマノイドの成長を、経済運営の効率性につなげようとする習政権の思惑が強く感じられた。
また、ヒト型という形態上の特徴も重要だ。現在の世界のインフラ、工場、自動車など多くのモノやサービスは、人間の利用を前提に設計されてきた。ヒト型であれば、四足歩行型などより実社会での利用の可能性は高まる。
それを新興国に輸出すれば、主要先進国が経験しなかった経済成長のパターン(例えば、AIを搭載したロボット医師が僻地の患者を診察するなど)が増えることも想定される。そうした新しい需要を創出することも、中国がヒト型ロボットを重視する要因だろう。
産業用の日本、軍事用のアメリカとの違い
さらに重要なのは、主要先進国との差別化だろう。日本では、ヒト型よりも産業用のロボットアームや、協働ロボットの製造技術で競争力が高い企業は多い。ヒト型ロボットの安全性をどう確保するかという懸念もある。この点は米国にも共通する。
米国は初期の段階で世界のロボット研究を牽引した。その主な対象は、軍事用の四足歩行ロボットだった。それに対し、中国ははじめから経済社会、安全保障の両分野を視野にヒト型ロボットの商業化を追求した。それにより潜在的なものも含め、世界の関連需要を手中に入れようとしているのだろう。
