絵と文字を組み合わせるメリット
また、多くの読者が、コミックを通じて現実世界の不安や心配から一時的に解放される感覚を得るなど、メンタルヘルスへのよい影響を感じている。子どもの声として
「コミックは現実世界に影響を与えないフィクションの宇宙だから、心配ごとから心を離すのを助けてくれる」
「世界がみじめに見えなくなる」
などが挙げられている。ファンタジーやSF、ロマンスのコミックを読むことが、前向きでいられる手助けとなっているのである。
また、字を読むことに困難を感じる子たちにとっては、絵と文字の組み合わせが、読書への抵抗感を減らす。なお、「字を読むのが苦手」とひとくちに言っても、そこには多様なひとたちが含まれる。
たとえば学習障害(LD)に分類される、生まれつきの脳の特性によって、努力しても読字能力の向上に限界がある発達性ディスレクシアのひと。あるいは知的障害のひともいるし、ADHD(注意欠如・多動症)で集中力がつづかないといったひともいる。また、移民や移民二世で言語のカベがあって読めない場合、ネグレクト(育児放棄)によって基本的な教育を受けられなかった、あるいは強いストレスや精神疾患が原因で「文章が頭に入ってこない」場合もある。もちろん、視覚や認知、脳機能などにかかわるさまざまな課題によって読みにくい、読めない場合もある。
自分で自由に本を選ぶ体験の重要さ
2025年調査によれば「読書を楽しんでいない」と答えた層でも23.0%が紙のコミックを読み、12.0%がタブレットなどの画面上でコミックを読んでいる。さらに、多くの読者がコミックを読むことで「自分でもコミックや詩の創作をしてみたくなった」とも言っている。
スコラスティック社も、コミックに限らず自社の子ども向けの本事業を後押しし、より普及させるのに必要なエビデンスを獲得するべく2006年から調査報告書の刊行を始めている。
同社の報告書では、子どもたちの89%が「自分で選んだ本が一番好き」と回答している(※7)。自分で自由に選んで読み切る体験は重要だ。そしてコミックはそういう経験をつくりやすい。
日本でも広く大人に、そして学校や図書館現場、あるいは行政や政治家にもマンガ読書の効用が正しく共有され、具体的な予算獲得につながることが望まれる。
※7:Scholastic Inc. "Kids & Family Reading Report: 7th Edition" 2019年
