かつては覚醒剤と同列の扱いだった

まだ「マンガなんか読書とは認めない」と思っているひとのために、欧米でコミックがちゃんとした読書だと認められ、図書館に入りやすくなった背景について、よりくわしく整理してみよう。

①コミック読書に関する調査、研究が進展し、ポジティブな効果が確認され、共有された

かつてはコミックを読むと「バカになる」「暴力的になる」と語る大人が無数にいた。文字の本の読書を遠ざける、低俗で害のあるメディアだと思われてきた。

日本でも1950年代後半に最初のピークを迎えた「悪書追放運動」では、マンガはヒロポン(覚醒剤)と並べて非行の原因と決めつけられ、燃やされた。子どもがマンガを次々と読んでいく様子は「シャブ中と同じだ」などとまじめに論じられていた。

たとえば高橋健二「悪書は良書を駆逐するか」では「努力なしに読める漫画や俗悪な物語は、惰性的にいくらでも読める。ヒロポンのように、ぐったりしながら」と形容されている(※5)

日本のマンガ本が山積みになっている
写真=iStock.com/Oleh Yatskiv
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科学的な研究で証明された効果

常識的に考えて、違法の向精神薬と本は同じ効果を持ちえない。

また、ヒロポンはシャキッとするのであり、ぐったりはしない。したがって比喩としてもおかしい。批判派の科学的なリテラシーはこの程度のもので、思い込みでマンガを攻撃していた。

こういう非科学的な偏見は、読書研究の世界では過去のものだ。

クラッシェンをはじめ、中立的なスタンスで研究すると、コミックの読書には悪い効果は見られない、むしろいいことのほうが多いという結果が次々に出てきた。たとえば

・生徒の読解スキルを向上させる
・学校のカリキュラムの一部にグラフィックノベルを使うことで、複雑なアイデアや批判的リテラシーの理解を高める

といったものだ。

英国NLT(国立識字基金)の子ども・若者のコミックの読書の調査報告書を見ても、ほとんど良い影響しか書かれていない(※6)

コミックを読む子ども・若者は、読まない子どもより「読書を楽しむ」割合が約2倍(58.6%対33.1%)高い。また、毎日何かを読む割合が、読まない子どもより高い(35.7%対22.8%)。

コミックは、より複雑なテキストへのかけはしとなり、ウェブコミックの活用が学びの理解力向上につながる。

※5:「學鐙」52巻6号、40p、丸善、1955年
※6:"Children and young people’s engagement with comics in 2023"、National Literacy Trust、2024年