世界各地で次々ベストセラーに

なぜなら図書館、学校、保護者が求め、設定してきた「こういう表現は8~11歳向け」「こういう表現を含む場合は13歳以上」といったレギュレーション(自主規制)、レイティング(年齢区分)の勘どころが、当時のコミック出版社にはあまりわからなかったからだ。書店や図書館の児童書担当者がどんなことをすれば動くのかという児童書業界のセオリーに関しても、当然ながら児童書出版社のほうが熟知している。

まさにそうした児童書出版社であるScholasticは、図書館や学校、保護者が求める対象年齢や「教育的配慮」がどんなものかをよく知っていた。

『ボーン』を皮切りに、Graphixのタイトルは(日本を除く)世界各地で次々にベストセラーになった。国際的なコミックのアワードであるアイズナー賞を複数作品で受賞・ノミネートされ、十数作品がニューヨーク・タイムズのベストセラー入りを果たし、Circana Bookscanの児童グラフィックノベル部門のトップ20リストをほぼ独占する。

コミックを読む子供
写真=iStock.com/SteveStone
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文字を読む練習になるという評価

売れただけでなく、評価も変わった。

2023年のSLJの調査によると、公共図書館の96%が児童向けグラフィックノベルの棚を設置し、90%の公共図書館員が「読むことに困難を感じている読者」の読みの流暢さ(スムーズに読む能力)を高めるためにグラフィックノベルを推奨している、と回答している。アメリカの司書は、字を読むのが苦手な子にとって、コミックを読むことが文章を読む練習になるという観点からも評価している。

こうしてコミックは、

・調査によって文字の本と対立するものではなく、コミック以外の読書への呼び水にもなるとわかった
・作品・芸術として高く評価されるグラフィックノベルが台頭し、社会的なステイタスが向上した
・児童書出版社が参入し、保護者や司書、教師が安心して推薦できるタイトルが増えた

といった理由が重なり、重宝されるようになった。

日本でももう少しマンガ読書を家庭や学校、図書館でも広く認めた方が、読書の敷居を下げ、また、字だけの本が苦手な子も本の世界に入ってきやすくなると思われる。