図書館でコミックが認められた経緯

欧米でも、むかしはコミックに好意的ではなかった。北米でも1990年代以前、コミックは学校図書館や公共図書館では「本物」の本として認められてこなかった。

ではいかにして変わったのか。

ここから欧米と日本の「コミック読書」へのスタンスの落差の要因が見えてくる。

1990年代に粗悪な紙に印刷したペラペラのコミック・ストリップ(薄い雑誌形態のコミック)とは異なる内容と造本で刊行される「コミックス書籍」であるグラフィックノベルが台頭し、文学的なコミックが賞を獲るようになる。

さらにそのころからMANGAも日本のコミックス単行本のように200ページ前後の単行本フォーマットで、書店で販売されるように変化する。それ以前はスーパーヒーローもののコミック雑誌同様に、もっと薄い冊子形式で販売されていたが、外形的にも「書籍」になった。

さらに並行して、先ほどいったクラッシェンらによる「マンガを読むことは読書全体にとってプラスの効果がある」という考えが広がるといった変化も追い風となり、書店や図書館でもMANGAが購買されるようになる。

『ドッグマン』
写真提供=©Bryan Smith/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ
『ドッグマン』

「ハリポタ」の会社が人気に火をつけた

今日の盛り上がりの直接的なきっかけを作ったのは、老舗児童書・児童誌出版社のScholastic(スコラスティック)社だ。アメリカで『ハリー・ポッター』を刊行する権利を持っている会社である。

スコラスティックは2005年にGraphixという出版レーベルを立ち上げ、ジェフ・スミス『ボーン』のフルカラー版を刊行した。

『ボーン』はそれ以前に別の出版社で刊行されていたが、公共図書館の児童書担当者のあいだで「置いておくとめちゃくちゃ借りられるグラフィックノベルがある」とウワサになっていたのである。スコラスティックはここに目を付けた。

アメリカでは、MANGAにしてもいわゆるアメコミにしても、基本的には児童向けではない。

しかし児童が好んで読んでいるグラフィックノベルも一部にある。ということは、需要はある。だがそこには先行するコミック出版社は手を付けづらい。