“出口の見えない不安”に苛まれた死刑囚60人

これは、一見人間並みに扱っていると見せて、よりとんでもない地獄だった。普通の日常が続く。その日常の中に、突然「明日、執行」が降ってくる。現に、深夜のうちに14人が連れ出され、絞首台に消えたこともあった。減刑の観測が流れたかと思えば、処刑が行われる。当時収監されていた死刑囚たちは、そろって出口の見えない不安に苛まれていたのだ。

実際、後藤が話を聞いた死刑囚たちは口々に「部下の誰かがフィリピン人を虐殺したのは事実だが、自分は知らなかったと証明してくれる人がいない」「自分が処刑されるのは当然だが、無実の者が随分いる。救う手立てはないだろうか」などと話していたという。

興味深いのは、後藤が話を聞いた死刑囚たちが、誰一人「助命してくれ」とは言わなかったことだ。その背景を、後藤はこう記している。