これまでは「調整上手で速く動く人」が評価された

直感的にわかりやすいよう、非AI環境とAI環境それぞれにおいて、ハイパフォーマー/ローパフォーマーの特性の差をレーダーチャートに示した(図表1)。これを見ると、非AI環境では、「相談力」「対人感情のケア」「対人関係調整」などの特性が差となっているが、AI環境では、「(思考の)時間軸の長さ」や「脱・二分法思考」など、思考特性の差が大きい。

職種や性年代といった属性を統制したうえで多変量解析を行うと、非AI環境で成果を出している人の特徴は、対人調整、そして役割認識である。もう少し噛み砕けば、「自分に期待されている役割を正確に把握し、関係者と調整しながら、素早く動く人」だ。

【図表2】非AIパフォーマーの特性
出所=パーソル総合研究所「AI環境における人材とマネジメントに関する定量調査」

こうした特性は、日本の職場で長く「デキる人」と呼ばれてきた像と、ほぼ重なる。筆者の実感でも、特に、堅実なビジネス・モデルを「スムーズに回す」ことのできる優秀な人材とは、こうした人材である。

だが、この分析にはもう一つ、見過ごせない数字がある。「興味を大事にする」、「新しいアイデアを思いつくと、人に話したくなる」がいずれもマイナスに関連していることだ。つまり非AI環境では、自分の興味を優先することも、思いついたことを周囲に話すことも、成果にとってはむしろ足を引っ張る要素だということだ。組織の期待に自分を合わせ、余計なことを言わずに手を動かす。それが最も合理的な戦略だったということだろうか。

このことは、AI環境の分析においても重要なポイントとなる。

AI時代は「勝手に動く人」の強みが生きる

次に、同じ分析を、AIをヘビーに使っている層に対して行うと、有意な項目の顔ぶれが入れ替わる。

行動特性で最も強く効いていたのは、「優先順位の調整」だった。続いて「共有・改善ループの調整」、「事前情報の構造化」、「フィードバック・シーキング」である。

【図表3】AIハイパフォーマーの特性
出所=パーソル総合研究所「AI環境における人材とマネジメントに関する定量調査」

マインドセットでは、失敗しても「次に活かせる」と前向きに考える、面白そうだと思ったらすぐ行動に移す、誰かに言われなくても自分でテーマを見つけて動ける、新しいことをとりあえず試してみたくなる。思考特性では、時間軸の長さ、メタ視点、脱・二分法思考(物事を白か黒か、0か100かなど、両極端に分ける思考法)が有意であった。

ここで非AI環境においてマイナスに働いていた「興味」や「アイデア共有」といった要素の近接要素が、AI環境ではプラスの側に回っていることも興味深い。これまでの職場では、しばしば「落ち着きがない」「勝手に動く」と評されてきたタイプであろう。その特性が、AI環境では成果の源泉に変わっている。

一方で、非AI環境の主役だった対人調整と役割認識は、AI環境では有意な項目として姿を消す。役割をきちんと守り、周囲と調整しながら速く動くこと。もちろんそのこと自体が悪くなったわけではないだろうが、それはもはや明確な「差」を生む特性ではなくなっていることが示される。「違い」を生む場所が、移動したのだ。