カネを流出させる富裕層も取り締まり
成長期待の高いAIなどの分野の技術者、あるいは技術そのものの流出を防ぐ。自らの考えに背くものは厳正に罰する。そうした習政権の思惑が、今回の出入国管理の厳格化につながったとの見方は多い。
習政権が締め付けを強めているのは、高度人材やレアアースのようなモノにとどまらない。国境をまたいだ「カネ」の流出にも、鋭い監視の目を光らせている。特に、今年の資金流出阻止策の実行は、例年と比べかなり苛烈なようだ。
今年5月、中国証券監督管理委員会(CSRC)など複数の金融監督当局は、海外株式などの売買仲介業者の検査を行った。その結果、老虎証券(タイガー・ブローカー)と長橋証券(ロングブリッジ・セキュリティーズ)、富途控股(フートゥー・ホールディングス)に総額3億3000万ドル(約520億円)の罰金と違法口座の清算を命じた。
7月、中国政府は資産3000万ドル超の富裕層を対象に、海外への投資で得た利益の最大20%課税を決めた。過去20年以上に遡る調査も別枠で実施するようだ。数十年ぶりの大規模な投資課税策といわれている。綱紀粛正の観点からの富裕層取り締まりにより、不動産バブル崩壊で悪化した地方財政の立て直しにつなげたい考えもあるのだろう。
チャイナ・リスクを押し上げる習政権
マナス創業者らへの制裁措置は、かつて習氏がアリババに命じたアント・グループの上海・香港市場への上場中止以上に厳しいとの見方もある。ヒト、モノ、カネのいずれも、習政権下の中国は、「一度入ったら出られない鳥かご」になったと危惧する専門家もいる。
習近平政権下で共産党員や軍幹部の粛清が相次ぐ中、中国国内企業、多国籍企業のいずれも能動的に先端分野で新たな投資を実行し、新しい需要創出に取り組むことは難しくなるだろう。
習氏が長期の支配体制確立を狙って、ヒト、モノ、カネの締め付けを強めるほど、中国の景気停滞、社会不安など「チャイナ・リスク」は一段と高まるとみられる。それは、習氏の政権基盤を強化するかもしれないが、自由な経済活動を阻害することは間違いない。長い目で見て、中国経済にプラスに作用するとは限らないはずだ。


