制限・禁止の判断基準はあいまい

従来、中国は以下の5つの分類に基づいて自国民の出国を制限・禁止してきた。

① 有効なパスポートを持たない・検査を拒否する場合
② 刑事処罰中または被告人・容疑者の場合
③ 未解決の民事事件で裁判所が出国禁止を決定した場合
④ 過去に不法出国・強制送還歴があり制限期間内の場合
⑤ 国家の安全・利益を害する恐れがあり、政府が決定した場合

気になるのは、習政権および関連当局の判断基準がやや曖昧なことだ。法規制の実行要件が主観的かつ明確でないという指摘は、反スパイ法(反間諜法、2014年制定、2023年改正)など習政権が打ち出した規制にも通じる。

頭脳流出を阻止する新規制のインパクト

今回、国務院が取りまとめた出入国管理の新規制は、外国人の入国管理強化に加え、出国する自国民を取り締まることを主眼に置いている。

制限措置は大きく3つに分かれている。

1.出入国証明書類の不正取得・不法出入国で行政拘留処分を受けた自国民に、処罰終了後6カ月〜3年間の出国を禁止できる
2.海外で違法・犯罪行為を行い、国家の安全と利益を害する自国民に、帰国後6カ月〜3年間の出国を制限できる
3.政府の輸出管理策や技術の輸出入管理に違反し、国家の産業・技術の安全を害する恐れがある自国民に、出国を禁止できる

最も重要なのは3つ目だ。従来の「国家の安全・利益を害する恐れ」という抽象的な規定と比較すると、「国家の産業・技術の安全を害する恐れ」と適用領域を具体的に書き込んでいる。これによって、技術者・研究者への出国禁止に明確な法的根拠が与えられた。

3つ目の条項に抵触した場合、出国禁止期間の上限は明記されていない。これは事実上の頭脳流出阻止策といっても過言ではない。

しかも、習政権は出入国の仲介業者に、法人設立から15日以内に届出を行い、専門人材を配置するよう指示した。習政権は、自国にAIやレアアースなど戦略技術・物資を囲い込み、自らの判断次第で対象者の国境を越えた移動を厳格に管理することを狙ったといえる。