ツイッター改革の手法で政府歳出を改革する

2024年11月5日に投開票が行われたアメリカ大統領選挙は、共和党の大統領候補ドナルド・トランプ氏の圧勝に終わった。世界の人々の関心は今や、25年1月20日に就任するトランプ次期大統領の政権構想と、閣僚人事に移っている。なかでも「トランプ人事」の目玉といえるほど注目されているのが、テスラやスペースXでCEO(最高経営責任者)を務めるイーロン・マスク氏の政権入りだろう。

大統領選の最中、トランプ氏の暗殺未遂事件が起こった24年7月13日に、マスク氏はトランプ支持を正式に表明した。

以後、10月に入ってからはトランプ氏の集会に参加して応援演説をしたり、激戦のペンシルベニア州で「毎日1人の有権者に100万ドルを贈る」と表明したりと、トランプ氏勝利に大きく貢献した。選挙戦の期間中、マスク氏はトランプ陣営に少なくとも1億1900万ドル(183億円)の献金を行ったとされる。

トランプ氏は次期政権で「政府効率化省(DOGE)」という諮問機関を新設すると発表した。同省は連邦政府全体の監査役を担い、トランプ氏はマスク氏とヴィヴェック・ラマスワミ氏(製薬スタートアップ企業ロイバント・サイエンシズの創業者)を同省のトップに据えた。

マスク氏は大統領選の期間中、自分が手に掛ければ年6兆7500億ドル(約1000兆円)の連邦政府歳出のうち、約30%にあたる2兆ドル(約300兆円)を削減できると表明。11月21日にはマスク氏とラマスワミ氏がウォール・ストリート・ジャーナルに連名で寄稿し、連邦政府の歳出を大幅にカットするDOGE計画を発表した。具体的には国際機関への無償供与15億ドルや米国公共放送協会への支出5億ドルなどが削減対象になるという。また、連邦政府の「大規模な人員削減」に踏み切ることは可能とも明らかにした。

マスク氏といえば、22年にツイッターを買収した後、取締役の全員を解任して従業員の約8割を解雇するなど、大胆なリストラ策によってコストを削減したことで知られている。今度は連邦政府でも、同じことができる立場になるようだ。

マスク氏の買収によってツイッターはXと名称を変更し、非上場化に踏み切った。そしてマスク氏は人員整理による組織改革を行い、広告ビジネスからの脱却を目指して有料の公式承認バッジを導入するなど、数々の改革を短期間で実施した。マスク氏は大胆にリストラをする一方で、必ず組織の生産性を高めていく。

単なるコストカットではなく、組織改革とAIなどのテクノロジーを用いたDXで必ず効率性・生産性を向上させるのが「イーロンウェイ」だ。政府に対しても、マスク氏は同じような改革を行うだろう。

マスク氏が掲げる政府歳出の30%削減に対しては、懐疑的な見方も多い。しかし、トランプ氏の期待通りにマスク氏率いる「政府効率化省」が機能すれば、アメリカは国として競争力を高めていける。

マスク氏がトランプ新政権に影響力を持てば、自動車産業や宇宙産業などにおける規制緩和を大きく働きかけるだろう。それに関連して、政府のさまざまな調達へのアクセス拡大も予想されるところだ。

(構成=野上勇人 写真=時事通信)