日本では報道されない「イーロンウェイ」の狙い

ドナルド・トランプ米大統領が誕生してから間もなく2カ月となる。この間、トランプ大統領は100を超える大統領令を発し、公約の5割に着手するなど、そのスピード重視の姿勢は私が就任前から予想してきたものだ。なかでも、実業家のイーロン・マスク氏を事実上のトップに据えた「DOGE(政府効率化省)」による官僚機構への管理の強化は、突然のUSAID(アメリカ国際開発庁)の閉鎖の報道などにより、世界に衝撃を与えている。

トランプ大統領はアメリカ時間の2月11日に、マスク氏を大統領執務室に招いて2人で記者会見を行い、その模様を動画配信した。

トランプ大統領は会見の中でマスク氏を「非常に優秀で実際に多大な実績を残している」と褒め、2人の関係が現時点では良好であることを窺わせた。私は2人の蜜月について以前から指摘してきたが、実際に共働を始めてからは関係性をより一層強めていると見られる。

トランプ政権の政策には、マスク氏の価値観がかなり投影されている。それは、マスク氏がお気に入りの暗号資産「ドージコイン」から名付けたとされるDOGEという名称だけではない。トランプ政権が掲げる連邦政府職員の在宅勤務の禁止も、マスク氏の考えと一致する。

ツイッター(現X)買収時は、従業員のリモートワークを禁止し、週40時間以上はオフィスで働くように求めた。テスラやスペースXを所有しているマスク氏は、誰よりもハードワーカー。「オフィスで仕事をするほうが生産性が高い」と考えている。

マスク氏はDEI(多様性、公平性、包括性)施策に反対の立場であり、トランプ大統領も「性別は男性と女性のみとする」と就任演説で明言した。これは「人材は能力によって選抜されるべきだ」という価値観の裏返しと考えられる。こうした考え方は、DEI推進事業を手がけてきたUSAIDへのアクションや、教育省のDEI関連助成金1億100万ドル(約160億円)分の打ち切りなどにも表れている。

また、トランプ政権ではバイデン前政権が行ってきた偽情報対策を、政府による言論の検閲と位置づけ、大幅な方針転換を図っている。マスク氏がツイッターを買収したのも、そもそもは表現の自由のためであり、「偽情報であっても表現の自由が保障されるべきだ」という価値観は、トランプ大統領とも通底している。

トランプ大統領はアメリカ大統領府(ホワイトハウス)のHP上で「大統領の『政府効率化省』の設立と実施」を発表している。その中で特筆すべきは、「連邦政府のテクノロジーとソフトウエアを近代化して、効率性と生産性を最大化する」と宣言していることだ。

加えて「大統領の『政府効率化省』労働力最適化イニシアティブの実施」も発表している。この大統領令は、連邦政府の効率性と生産性を最大化し、国民への説明責任を回復することを目的としているという。

一連のDOGEの権限強化は、日本の報道では「退職者4人に対して新規採用を1人に制限する」「米連邦政府の職員7万人超が早期退職に応じる見通しになった」ことなどを取り上げ、リストラばかりが強調された。

(構成=野上勇人 写真=時事通信)