「トレンド」は本物の潮流 「トレンディ」はただの流行

ビジネスを進めていくなかで、変化を予測することが重要なのは言うまでもない。しかし、予測はあくまでも予測であり、未来を完全に言い当てることなど不可能だ。2024年のアメリカ大統領選挙ではトランプ氏が返り咲いたが、この結果は世界中の人々に衝撃を与えた。世界全体に影響を与えるような予測不能な出来事は、今年も起きるだろう。

一方、世の中は今後確実にこの方向へ進んでいくであろうと、予測できる変化も少なくない。たとえば、日本で「もっと人口が減る」ことは各種統計からも明らかである。「もっと少子高齢化が進む」ことも、「もっと過疎化が進む」ことも、確実だと言っていいだろう。ところが、こうした予測できる変化を前提とせずに仕事をしている人は、意外と多いのではないだろうか。持続可能なビジネス戦略の分野で、世界有数のリーダーとして知られるアンドリュー・ウィンストン。彼は著書『ビッグ・ピボット』のなかで、世界が直面する「重要な3つの潮流」を挙げている。

潮流の一つは環境問題で、「もっと暑くなる」からクリーンなビジネスが支持される。2つ目は資源問題で、「もっと足りなくなる」からイノベーションが支持される。そして3つ目がガバナンス問題で、「もはや隠せない」から隠さない者が支持されるようになると指摘している。

また、世界的な未来学者であるエイミー・ウェブが創業したシンクタンク「Future Today Institute」は、変化の要因を見極めるには、「矛盾、変曲、慣行、工夫・創意、極端、例外・希少」に着目すべきと発表している。さらに同社は、従来の「インサイト(洞察)」に加えて、「フォーサイト(未来への洞察)」の必要性を説き、「トレンド」と「トレンディ」を見分けることが重要だと述べている。ここでいう「トレンド」とは、本物の潮流のこと。一方、「トレンディ」は一時的な流行にすぎないものだ。

では、本物の潮流である「トレンド」を、どのように見極めればいいのか。

予測の際、私が意識するのは「兆候」を見逃さないことだ。

たとえば「もっと暑くなる」というトレンドを考えてみる。24年には、『日経MJ』が毎年発表するヒット商品番付の一つに「春『夏夏』秋冬」というワードがランクインした。長い夏の影響で、売り場に大きな変化があったとしている。

実際、長引く残暑で秋冬衣料の売れ行きが悪く、24年10月の売上高では百貨店が32カ月ぶりの減収。衣料品・靴専門店も軒並み減収となった。一方で、熱中症リスクの測定端末などは大きく販売を伸ばした。

実は長期予報を見ると、24年は猛暑になると年初から予想されていた。兆候を見逃さず、長い夏を予想して対応した者は勝ち、従来通りの対応しかできなかったところは苦戦することになった。

物事を予測するうえでは「行動↓感情↓価値観を見る」ことも重要なポイントだ。消費者の行動に変化があったときには、「行動(What)」の変化だけにとどまっている場合もあれば、「感情(Why)」の変化を伴っている場合もある。そこまでの変化であれば一時的なトレンディである可能性が高いが、人々の「価値観(Being)」まで変化していたとしたら、それはトレンドだと考えてよいだろう。

(構成=瀬戸友子 写真=時事通信)