インフレが今後も続くなら…

将来インフレが続くかどうかは、誰にも分かりません。ですからシナリオを2つに分けて考えます。物価上昇が止まらないシナリオと、デフレに逆戻りするシナリオです。

まず後者から見ていきます。高い金利で借りた直後にデフレへ戻れば、不利になる可能性があります。ただ、デフレになれば住宅ローン金利も下がる可能性があります。そのときに借り換えができるなら、ある程度は備えられるのではないかと私は考えています。

なお、いまの3%程度というインフレ率がそのまま続くと見ている人は、多くありません。経済見通しでは、1.5%から2%程度に落ち着くシナリオを置くケースが多いようです。肌感覚と、専門家による予測との間には、けっこうな開きがあります。

インフレが続くシナリオは、さらに2つに分かれます。賃金が物価と同じかそれ以上に上がる良いインフレと、賃金が物価上昇に追いつかない悪いインフレですね。ここ数年の日本は、後者に近い状況でした。

スーパーの通路に放置されたショッピングカート
写真=iStock.com/miniseries
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では、悪いインフレなら借りないほうがいいのでしょうか。実は、逆の見方もできます。

実質賃金が物価に負け続けるということは、購買力が年々落ちていくということです。そうなれば、借りられる金額も減っていく可能性があります。住宅ローンは、年収に対する割合で上限が決まるからです。家の値段は上がるのに、年収がついていかなければ、「その年収では、ここまでしか貸せません」と言われる可能性があります。

インフレが続き、しかも実質賃金は上向かないと予想するのなら、理屈のうえでは、今が一番信用力の高いタイミングだということになります。ご自身が本気でそう予想しているなら、待つことは有利に働きません。

物価が上がる局面での住宅ローン

固定金利で借りると何が起きるのか。具体的な数字で追ってみます。手取りの月収が30万円、生活費が20万円、住宅ローンの返済が元利均等で月10万円としましょう。支出の合計はちょうど30万円。貯金はできない、ぎりぎりの家計です。返済が支出に占める割合は約33%になります。

ここでインフレ率2%が続いたとします。生活費は毎年2%ずつ増えていきます。20万円は翌年20万4000円になり、その翌年は20万8080円になります。同じ生活をするための金額が、毎年膨らんでいくわけです。

ところが、住宅ローンは違います。固定金利なら、10年たっても10万円のままです。返済額はインフレしません。10年後を計算すると、生活費は約24万4000円。2割増しです。支出合計は約34万4000円ですが、返済額は10万円のまま動きません。返済が支出に占める割合は約33%から約29%に下がります。

20年後はもっとはっきりします。生活費は約29万7000円、およそ1.5倍です。でも住宅ローンは1.5倍になりません。返済が支出に占める割合は、約25%まで下がります。

借金が、インフレによって実質的に圧縮されているんですね。国が金利を低く抑えたがるという、いわゆるインフレ税の話が出てくるのも、ここに理由があります。物価が上がる局面では、債務を持っている側が有利になります。これはインフレの特性です。

賃金の側が動けば、効果はもう一段はっきり出ます。