「私が賛同できない使い方」

賃金も物価と同じくらい上がるケースを、さきほどの家計で見ておきます。

手取り30万円が2%増えれば、6000円のプラスです。一方、増える支出は生活費20万円の2%分ですから4000円。ローンの10万円には、インフレ率がかかりません。差し引き、月に2000円が浮く計算になります。

支出の一部を固定してしまうと、賃金の上昇がそのぶんだけ家計の余裕として残ります。ローンをインフレに連動させない、という選び方の意味は、ここにあると思っています。

そのうえで、変動と固定の比較です。変動金利の適用金利は、固定金利より明らかに低い。ですから当初10年ほどの間に劇的な金利上昇が起きなければ、総返済額で固定に追い抜かれることは考えにくいと思います。

住宅ローンは、最初のうちに利息を多く払う構造になっています。序盤に大きな上昇がなければ、後半で金利が上がっても返済額はそれほど増えません。最初が肝心、という言い方ができます。

ただ、「どうせすぐには上げられないだろう」と高を括るのは危ないと思っています。固定金利でも十分にメリットが出る局面ですから、安心を取りにいく判断は悪くありません。これは私の考え方です。

もう一つ、賛同できない使い方についても書いておきます。「固定で目いっぱい借りて、その資金を投資に回す」という考え方です。理屈としては成立しますが、それは単にレバレッジをかけているだけだと思うんです。借りようと思った分だけ借りればいい。

通りに連なる複数の銀行
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繰り上げ返済をする必要はないワケ

繰り上げ返済についても、同じ話になります。有利な条件でローンを組めているなら、無理をして繰り上げ返済をする必要はない、というのが私の考えです。手元の資金を減らしてまで急いで返すより、長く借りたまま、その資金を運用に回すほうが合理的な場合があります。もちろん、家計の状況によって答えは変わります。

たとえ話をひとつ。5キロ2000円で米が買える権利を持っているとします。店頭では4000円を超えています。この権利を、わざわざ早く使い切ってしまう人がいるでしょうか。期限が来るまで、絶対に手放さないはずです。

いわゆるお宝保険を、みんな手放しません。ではなぜ、お宝ローンだけは手放そうとするのでしょうか。

もらえるもの、受け取るものが有利なら、人は手放しません。ところが「借金」という言葉がつくだけで、判断がまるごと変わってしまいます。この領域依存は、なかなか興味深いなと思います。

もっとも、理屈がすべてではありません。長すぎるローンは、精神的に重いです。何歳まで続くのかという事実が、思っている以上に人の気持ちを重くします。この仕事をしていると、そう感じる場面が何度もあります。ですから「必要以上に長く借りましょう」とも、私は言いません。

名目金利だけを見て「高いから買わない」「高いから急いで返す」と決めるのではなく、物価の上がり方との関係も合わせて考えてみてください。払っている金利が物価の上がり方に対して高いのか安いのかを考えることが大切です。同じ金額のローンでも、上手に使えるかどうかで、人生で使えるお金の量は変わってきます。

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