買うタイミングは間違えやすい
「複利の効果が効くから長期投資がいい」という説明をよく聞きます。アインシュタインの言葉として紹介されることもありますね。ただ、複利かどうかは本質ではないと思います。
考えてみてください。単利でも複利でも、明日儲かるほうがいいに決まっています。私たちは、複利だから投資をするわけではありません。私が考える長期投資の意味は、もっとネガティブなものです。エントリータイミングの失敗を帳消しにできる可能性が高いことが、大きな理由の一つです。
人間は基本的に高値で買いたくなります。リーマン・ショックの大底では、なかなか買いたくならないものです。みんなが儲かっている時期、割高で今後10年の実質リターンは乏しいとされる局面ほど、株を買いたくなります。
私たちは、買うタイミングを間違えやすいものです。私もそうです。それを20年という時間をかけて薄めていく。「ずいぶん高いところで買っていたな。それでも、続けてよかった」と思える結果に持っていくために、長さが要ります。長期がいいというより、短期では損をする可能性があるから長期が必要なのだと思います。
インデックスを選ぶことも、同じ意味でネガティブな選択です。優れたアクティブファンドを選び抜けるなら、インデックスを買う理由はありません。個別銘柄を見極めて売買できるなら、そのほうが増えるからです。インデックスの長期積立は、投資の才能がなくても株式のリターンを取りにいける手法だと理解しています。才能を問われないのが、この手法のいいところだと思うんです。
「インフレ対策だから株を増やす」という説明も、私にはしっくりきません。戦略は一度決めたらぶらさずに続けるものですが、インフレかデフレかは外部環境です。それに合わせて比率を動かすのは、マクロ判断という難しい作業を自分に課すことになります。
考え抜いた人とそうでない人の大きな差
そもそも企業はなぜ収益を上げられるのか。株価はなぜ、最終的には価値に収斂していくのか。資本主義経済が普通に発展していくなら、20年後の企業価値は今よりある程度高くなっていると考えられます。株価は高すぎたり低すぎたりを繰り返しますが、最終的には価値に近づいていく。だから長期で投資する。理屈としては、この順番だと思うんです。
こうした問いを、相場のいい時期にひとつずつ考えておく。それが、20年持ちきる助けになると思います。
上げ相場のうちに考え抜いた人は、嫌な時期に嫌なことを考えなくて済みます。「それはもう分かっている」で終えられます。逆に、いい相場で何も考えてこなかった人は、下げ相場で初めて「本当に長期投資でいいのか」と考え始めます。苦しいときにその問いに向き合うのは、つらいと思います。
チャートを見せられて「これを信じるしかない」と言われても、それは論理を信じていることにはなりません。山に登るとき、どれだけの装備を持っていくか、という話に似ています。「この人が一緒なら大丈夫」は装備ではありません。その人がいなくなった瞬間、手元には何も残らないからです。
私自身、発信を続けるつもりでいます。それでも、病気や事情で続けられなくなる可能性はあります。参考にしてもらえるのはうれしいのですが、アンカーは自分のなかに置いてほしいと思うんです。誰かが助けてくれることだけを前提にすると、その人がいなくなったときに投資を続ける根拠が揺らぐかもしれません。
自分の頭で考え抜いた理屈は、誰が去っても手元に残ります。自分なりに考え、答えを持てている人なら、投資を続けやすいのではないでしょうか。アンカーは他人ではなく、自分のなかに置いてほしいと思います。
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