株ではなく「物語」を買っている

少し嫌な言い方になるかもしれませんが、書いておきます。いま株式インデックスを買っている人の多くは、株を買っているのではないと私は感じています。買っているのは物語ではないか、と。

「沈みゆく日本から、投資によって脱出できる」という物語です。

この視点で見ると、いろいろな説明がつきます。動画やSNSにあふれる「いま買わないとやばい」「円の価値は削られる」といった発信です。ここまで直接的に言う人は多くありませんが、日本はもうだめで投資した人だけが救われる、というストーリーが漠然と共有されているように思います。

そして、現金で持っている人と比べて安心します。あの人たちは置いていかれるが、自分は大丈夫だ、と。

以前、「円安で増えた分は実質のリターンとは言えない」と話したことがあります。すると、「円のまま持っていた人より増えているのだから、喜べばいい」という反応がありました。その感覚も分かります。ただ、円で持っている誰かが貧しくなることと、あなたが幸せになれるかどうかは、別の話ではないでしょうか。

この物語は、信じる対象としては少し弱いと思っています。20年もつストーリーは、そう多くない気がするんです。ハワード・マークスが指摘するように、市場と人の心理は振り子のように振れます。楽観が続いたあとには悲観が続く。そして物語は、悲観に振れた瞬間に揺らぎます。信じる対象としては、少し脆いのではないかと思うんです。

コインの上でひっくり返っているミニチュアの豚
写真=iStock.com/CatLane
※写真はイメージです

そのインフルエンサー本当に信じられる?

信じる対象としてもうひとつ多いのが、特定の発信者です。「この人の言うことは信用できる」という形ですね。

知ってるつもり』という書籍が指摘する通りです。現代人はインターネットですぐ情報にアクセスできるため、自分の頭のなかにない知識まで「知っている」と感じやすいそうです。ただ、それは自分の外にある知識で、いざというときに引き出せません。そして、そのときが来るまでは問題になりません。

発信者の言葉を支えにするとき、考えておきたいことがあります。彼らはボランティアではなく、仕事なのです。

受けない動画を出せば収益は下がります。私自身YouTubeをやっていますが、正直まったく儲かっていません。発信したい内容が伸びないからです。では伸ばすにはどうするか。煽ればいい。世の中に煽りコンテンツが多いのは、それが儲かるからだと思います。

裏を返せば、煽っても儲からない時期が来れば、煽らなくなります。「いまは売ってはいけない」という内容は、たぶん数字になりません。私が発信者にアフィリエイターと似た感覚を持つのは、そこです。儲かる場所に、とても敏感なのだと思います。これは誰かを責めている話ではなく、発信を仕事にしている以上、私も同じ構造のなかにいるということです。

世の中は不確実なのですから、確率で考えたほうがいいと思うんです。あなたが信じているその発信者が、20年後も同じ発信を続けている確率は何%でしょうか。100%はありえません。

そこに20年分の資産を託すのは、少し心もとない気がします。では、数字ならどうでしょうか。多くの人が根拠にしている数字のほうを、先に確かめておきます。