同じS&P500でも年13%と3.9%の差
株式の期待リターンは、実質ベースで年5〜6%程度とされています。過去の統計から導かれた数字で、これ自体は事実です。ただし、長い期間をならした平均にすぎません。私たちが実際に投資する期間を20年や30年と考えると、その間のぶれは小さくありません。
米国のS&P500を例にとります。1980年から20年間投資した人は、複利換算で年13%ほど資産を増やせたといわれています。一方、2000年から2020年までの20年間に投資した人のリターンは、年3.9%程度にとどまったとされています。
差は9ポイント超。20年の複利で考えれば、結果はまるで違うものになります。実質リターンなので預金よりはましですが、「思っていたほど増えなかった」という未来もありえます。
この差を生んだのは実力ではありません。運です。いつ生まれ、いつ働き、いつ投資を始めるか。それを私たちは選べません。「何年に投資したかった」という願いは、原理的にかないません。
だからこそ、平均的な結果にならない20年を引く可能性を、最初から勘定に入れておきたいのです。先に知っておけば、そうなったときに慌てずに済みます。
「200年上がり続けた」は本当か
長期投資の根拠として、もうひとつよく使われるのが「株式は200年間、上がり続けてきた」という話です。私はこの説明があまり好きではありません。理由は2つあります。
ひとつは単純です。私は200年生きません。投資できるのは、長く見ても30年から50年です。200年をならした話を自分の30年に当てはめてよい保証は、ないと思うんです。
もうひとつは、データの出どころです。この200年チャートはジェレミー・シーゲルの著書で知られていますが、そこにあるのはアメリカのデータです。200年の連続したデータがある市場は、ほぼアメリカに限られます。戦争で取引所そのものが閉じているからです。
つまり、生き残った1つの市場を引っ張ってきて「200年続いた」と言っていることになります。かなり強い生存バイアスがかかっています。なぜアメリカでは閉鎖が短期で済み、データが途切れなかったのか。過去の大きな戦争で本土が戦場にならず、被害が小さかったからだと説明されることが多いようです。
同じような状況が起きたとき、いまのアメリカが同じ位置に立てるかどうかは分かりません。過去がこうだったから未来もこうなる、という帰納法には限界があります。私はこの200年を、長期投資の根拠としてあえて持ち出さなくてもいいと考えています。
では、長期投資に根拠はないのでしょうか。そうではありません。私が重視しているのは、企業価値と株価の関係です。

