「約7兆円の投資」で追い上げる中国

それでも、日本勢の優位がこれからも続くとは限らない。半導体の国産化は「中国製造2025」以来の国家目標であり、素材の自給もその重要な一角を占めている。

中国の経済メディア「経済観察網」の記事によると、2024年5月に発足した国家集積回路産業投資基金(通称・大基金)の第3期は、登録資本3440億元に達した。発足当時のレート(1元=約20円)で換算すれば約7兆円。第1期の1387億元と第2期の2041.5億元を合わせた額を、第3期だけで上回る規模である。

もっとも、3440億元がすでに投資されたわけではない。これは登録資本であり、出資する国有6銀行の1140億元も設立から10年以内に払い込む計画になっている。

それでも、中国が巨額の資金を投じて半導体の国産化を進めている事実は重い。今回の反ダンピング調査も、追加関税によって日本製との価格差を縮め、国内メーカーが競争する時間を確保する方向に働く可能性がある。

習近平政権にとって半導体は、米国との覇権競争の主戦場でもある。日本からの輸入に大きく依存している現状を、中国がこのまま放置するとは考えにくい。

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重要産業への投資を止めてはいけない

実際、中国の装置・材料メーカーは、政府の支援と国内需要を背景に成長している。現在、日本勢が優位に立つジクロロシランも、5年後、10年後まで同じ状況が続く保証はない。

重要物資を特定の国に依存するリスクが明らかになれば、依存する側は代替調達や国産化を急ぐ。今回はジクロロシランで日本が高いシェアを握り、中国がその供給に依存している。だからこそ中国は、巨額の資金を投じて国産化を進めようとしている。

では、日本はこの優位をどう守ればいいのか。

第1に、純度や品質の安定性、安定供給を支える研究開発や設備投資を続けることだ。素材メーカーが長年蓄積してきた工程知を次世代に引き継ぐ人材も欠かせない。

第2に、ジクロロシラン以外にも、日本への依存度が高く、中国が国産化や輸入規制を強める可能性のある素材や装置を把握しておく必要がある。輸出規制だけでなく、反ダンピング関税などによって日本企業の市場アクセスが制約される事態にも、官民で備えておくべきだろう。