制裁翌日に「特殊ガス」の調査を開始
今年1月、中国は日本への経済的な圧力を相次いで強めた。
ジェトロ(日本貿易振興機構)のビジネス短信によると、中国商務部は1月6日、軍事転用が可能な両用(デュアルユース)品目の対日輸出管理を強化し、即日施行した。高市早苗首相が昨年11月の国会答弁で、台湾有事は「存立危機事態」になり得ると述べたことに中国が反発して以降、重ねられてきた対抗措置の柱だ。
商務部はその後、2月と6月にも計80の日本企業・組織を輸出禁止・審査厳格化の対象に加えた。ジェトロのビジネス短信によると、商務部は6月の措置について「完全に正当、合理的かつ合法」と主張する一方、対象はごく一部の事業体と両用品目に限られ、日中の通常の経済・貿易関係に影響を与えるものではない、とも説明している。
注目したいのは、対日輸出管理を強化した翌日の動きだ。商務部は1月7日、日本原産の特殊ガス「ジクロロシラン」に対する反ダンピング(不当廉売)調査の開始を発表した。調査は即日始まり、2027年1月7日まで続く(最長6カ月延長可)。
商務部の発表によると、中国国内のメーカーから申請書が提出されたのは前年12月8日だった。約1カ月の予備審査を経て、対日輸出管理を強化した翌日に調査開始が発表された。新華社の報道によると、商務部報道官は国内法規と世界貿易機関(WTO)のルールに沿って審査したと説明している。
調査対象はジクロロシランに限定され、同じ関税分類に含まれる他の品目は対象外とされた。
日本製への依存をすぐには断ち切れない
前日の措置が「中国が日本に売らない」ものだとすれば、この調査は日本から輸入している品物の価格を問題にするものだ。この落差に、日本製への依存をすぐには断ち切れない中国の事情が透けて見える。
調査対象となったジクロロシランという名前を聞いて、何に使われるものか分かる読者は少ないだろう。ケイ素と水素、塩素からなる無色のガスで、半導体製造の「成膜」と呼ばれる工程で使われる。回路の土台となるシリコンウエハーの表面に、化学気相成長(CVD)などの手法で原子レベルの薄い膜を何層も積み上げていく工程だ。
ジクロロシランは、その膜の材料であるケイ素を届ける「運び屋」だ。アンモニアと反応させて絶縁膜となるシリコン窒化膜を作るほか、トランジスタの性能を高める結晶成長にも使われる。わずかな不純物や品質のばらつきが半導体の性能や歩留まりを左右する。

