一方、NHKは、受信料収入が7年連続で減少。受信料値下げの影響もあって3年連続の赤字を計上、2026年度も赤字予算を組んでおり、目標とする2027年度での収支均衡も達成できるかどうかは微妙だ。
「ネット受信料」の創設は、ネット社会への移行を見込んだNHK開局以来の一大改革だが、視聴者の理解が得られているとは言い難い。
井上樹彦会長は就任直後から「受信料収入のアップ」を最大の目標に掲げているが、ネット事業の必須業務化に伴い、肝心の受信料そのもののあり方が根底から問い直され、「公共メディア・NHK」のあり方を問題視されている重大な転換期に、旧来のNHK的思考の延長線上で収益を上げようとする姿勢には違和感を禁じ得ない。
5年後の若年層は「テレビを見ない人」ばかりに…
これまで「テレビ=放送」という文脈で捉えてきたことからわかるように、「テレビ離れ」は「放送離れ」を意味する。したがって、「テレビが日常風景から消える日」というのは、「放送が見られなくなる日」と言い換えることができる。
「テレビ離れ」の要因として、スマホやSNSの利用あるいはネット動画の視聴が進んだことが、総務省やNHK放送文化研究所の調査結果で裏づけられた。
「国民生活時間調査」の2020年調査から、「テレビ離れ」はある程度予測されていたものの、2025年調査で明らかになった急加速ぶりは、メディア関係者の予想をはるかに上回ったようだ。
衝撃的なデータを突きつけられて、放送界の困惑は隠せず、悩みは深い。
5年後の2030年ころを見通すと、「テレビ」を取り巻く環境は、もっと様変わりしているに違いない。
50代でもネット動画の視聴がテレビを上回り、シニア層でさえ「テレビ離れ」が進んでいる光景が予見される。さらにいえば、20代以上になるZ世代はもとより、その次の「テレビをあまり見ない家庭で育つ」α世代(アルファ世代)が10代を占めることになるため、若年層は「テレビを見ない人」ばかりになってしまうかもしれない。
また、ネット動画を視聴する人は着実に増えていくとみられるが、放送番組をネットで見る人がどこまで増えるかは予断を許さない。
なにしろ、タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する若年世代は、YouTubeなど短尺のネット動画を視聴する場合も、もっぱらスマホで倍速にして見るという。「テレビの前で、長尺の放送番組なんか、まだるっこしくて見てられない」という人は、増えることはあっても減ることはなさそうだ。
「テレビが家庭からなくなる」というトレンドは不可逆的で、もはやテレビというメディアがスマホやSNSを凌駕するとは考えにくい。
メディアライフの主役が交代した今、もはや「テレビ=ディスプレー」という一デバイスに過ぎなくなりつつある。今後も、テレビは家庭に鎮座し続けるとしても、放送番組を見るためではなく、ネット動画を視聴するデバイスとして機能する存在と化していくのではないだろうか。
メディアの興亡は数十年単位で大きく変動するが、衰退する時のスピードは速い。コミュニケーションツールとして定着したSNSや瞬く間に広がった生成AIが闊歩する中、長くメディアの主役であったテレビも、その例外ではない。


