急増する「TVer」、伸び悩む「NHK ONE」
ここで、放送番組のネット配信サービスの現状を簡単に整理しておく。
民放の公式番組配信サービスが「TVer」。
ドラマ、バラエティ、アニメなど、在京キー5局を中心に全国の民放局の主要番組を、おおむね放送後1週間程度、だれでも無料で視聴できる。
2015年のスタート後はしばらく低迷していたが、20年春に月間利用者数(MUB、月に1回でも配信サービスを利用した人)が1000万人に到達。その後、コロナ禍による在宅時間の長期化や高速スマホの普及、加えて全国の民放局が参加し番組ラインナップが充実したこともあって、22年秋には2000万人、23年夏に3000万人、24年夏に4000万人超と、利用者が急増し、現在は約4500万人が利用しているという。10年で「0 → 約4500万」という急成長ぶりで、3人に1人以上が月に一度は利用している計算になる。
当初は「録画忘れの救済サービス」的な位置づけともいえたが、現在は「放送番組に触れる主要ルート」の一つになりつつあるようだ。
もう一つは、NHKが運営する「NHK ONE」。
2025年秋にネット事業が必須業務化されたのに伴い、従来の番組配信サービス「旧NHKプラス」を軸に再構築された統合ネットサービスで、既に受信料を払っている人には新たな負担は生じない。
NHKによると、2026年3月末時点で「契約確認済みアカウント数」は362万件。「旧NHKプラス」がサービスを終了した2025年9月末では668万件だったから、増えるどころか、半減してしまっている。
新たにネット配信だけの利用者に課すことになった「ネット受信料」の契約件数は、2025年度決算によると2026年3月末までの半年間で7000件に過ぎないという。
NHKは、あらゆる番組内で「NHK ONE」のPRに躍起だが、視聴者の反応は鈍い。米大リーグなどの有力コンテンツを擁するBS放送を見られないし、ニュースでも一部が「フタかぶせ」で視聴できない不快さは否めない。
同じ番組配信サービスでも、「TVer」と「NHK ONE」では明暗が分かれている。
業容転換もままならない放送界
いうまでもなく、「テレビ離れ」は放送界を直撃する。
広告収入を主な財源とする民放局は、収入減に直結する。
電通がまとめている「日本の広告費」によれば、コロナ禍後の地上放送テレビ局127社の広告収入は1兆6000億円台で推移しているが、キー局の放送事業の収益は停滞しており、ローカル局に至っては2割程度が赤字を計上する事態に陥っている。
視聴者の「テレビ離れ」が加速すれば、広告主(スポンサー)の「テレビ離れ」も加速することは容易に想像がつく。今やテレビ広告の2.3倍の規模になったネット広告に、広告主がシフトするのは止められそうにない。
いつまでも広告収入に頼るわけにはいかない民放各局は、「TVer」の活用をはじめ、Netflixなど動画配信サービスへの番組提供やイベント開催といったライツマネジメントなど、業容転換で収益源の多角化に注力している。だが、民放界全体として、どこまで奏功するかは見通せない。

